■「ムンバイの元祖配達人」

 携帯電話用アプリが発達した現代では、特に読み書きができないパンデュラン・ジャダブ(Pandurang Jadhav)さん(39)のような人にとって、配達の仕事は厳しさを増している。

 ジャダブさんは、17歳でダッバーワーラーになって以来、ずっと仕事を続けてきた。しかし、昨年失業し、先祖代々住む村に戻りコメ作りをしていた。

 助けは5月にやってきた。ムンバイの有名レストラン数店と提携の話が持ち上がり、ジャダブさん率いる30人ほどのダッバーワーラーは仕事に戻ることができたのだ。

 ジャダブさんは現在、ステンレス製のお弁当箱に詰められた家庭料理ではなく、ナチョスやカルボナーラといったレストランの定番料理を、在宅勤務2年目に突入した、時間に追われる会社員に届けている。

 ジャダブさんらの配達はレストランにとって、薄利多売で料理宅配市場を複占するゾマト(Zomato)とスウィッギー(Swiggy)の2社に代わる手段となっている。

 国内十数都市で57店舗を展開する「インプレッサリオ・レストラン(Impresario Restaurants)」のオーナー、リヤズ・アムラニ(Riyaaz Amlani)氏は、「もちろんダッバーワーラーを助けたい。彼らはムンバイの元祖配達人だ」とAFPに語った。

 しかし、識字率が低いことから、ダッバーワーラーの多くは、テクノロジーが必要となる仕事の受注をためらっている。

 ダッバーワーラーの代表団体を運営するムケ氏は、代わりにダッバーワーラー自身のキッチンを立ち上げ、安価な食事をムンバイ中に届けることに決めた。

「私の祖父はダッバーワーラーだった。おじも、そして今は私もだ」と、ムケ氏は語った。

「これが私の好きな仕事だ。これからも人々に食事を届けたい」

 映像は6月に取材したもの。(c)AFP/Nivrita GANGULY