【8月23日 AFP】インド西部ムンバイ(旧ボンベイ)のお弁当配達人ダッバーワーラー(Dabbawala)は、130年の歴史を持つ名物的存在だ。新型コロナウイルスの流行によりオフィスが閉鎖され、仕事がなくなると、ダッバーワーラーらは、大規模スタートアップ企業によるデリバリーサービスに対抗すべく、はやりのレストランチェーンと提携した。

 カイラシュ・シンデー(Kailash Shinde)さん(42)は、テロ攻撃事件にも負けず、モンスーンによる洪水にも負けず、20年にわたり、ムンバイの会社員に温かいお弁当を届けてきた──新型コロナの流行で何度かロックダウン(都市封鎖)が導入され、1年間仕事ができなくなるまでは。

 2人の息子がいるシンデーさんは、伝統的なガンジー帽と白い民族服という特徴的な格好をした、5000人いるダッバーワーラーの一人だ。ダッバーワーラーは、ヒンディー語で「お弁当の人」を意味し、各家庭で作られたお弁当を決まった時間に配達することで世界的にも知られている。

 ダッバーワーラーの多くは、読み書きがあまりできないか、まったくできない。数字とアルファベットを組み合わせた複雑な記号を頼りに、毎日20万食のお弁当を正確に仕分け、自転車や手押し車、広範囲に延びるローカル線を使って、ムンバイのあちこちに届けている。

 ダッバーワーラーは、米ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)で「サービスエクセレンスモデル」として取り上げられている。また、英富豪リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏やチャールズ英皇太子(Prince Charles)ら著名人の他、米貨物輸送大手フェデックス(FedEx)や米ネット通販大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)など物流大手幹部が視察している。

 しかし、ロックダウンの延長により、ムンバイの数百万人のホワイトカラーが在宅勤務を余儀なくされた結果、多くのダッバーワーラーが昨年4月以降、家族を養うことに苦労している。

 ダッバーワーラーの代表団体「ヌータン・ムンバイ・ティフィンボックス・サプライヤーズ・チャリティー・トラスト(Nutan Mumbai Tiffin Box Suppliers Charity Trust)」のウルハス・ムケ(Ulhas Muke)氏は、「われわれの仲間は、レストランの配達人の職を探しながら、警備員や肉体労働をしなければならなかった」と述べた。