【8月11日 CNS】中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)が発表した「デジタル人民元の研究開発白書」によると、デジタル人民元が試験的に使える飲食店などは約132万か所、個人のウォレット(財布)は2087万個に上り、取引件数は7075万件を超えている。デジタル人民元導入に向けたシステムの設計、開発、調整は基本的に完了したという。

 これまでデジタル人民元の試験は「10エリア+冬季五輪会場」で行われている。2019年末から深セン市(Shenzhen)、蘇州市(Suzhou)、河北省(Hebei)雄安新区、成都市(Chengdu)、北京冬季五輪会場でテストを開始。 2020年11月からは上海市、海南省(Hainan)、長沙市(Changsha)、西安市(Xi’an)、青島市(Qingdao)、大連市(Dalian)が試験エリアに追加された。

 中国人民銀行貨幣金銀局の羅鋭(Luo Rui)局長は「デジタル人民元のサービス設計はそれぞれのグループのニーズを十分に考慮した上、デジタルディバイド(情報格差)を回避するため技術的な改善をしていく」と話している。

 多くの人々がサービスを受けられるようハードルも下げていく。銀行口座を持たない市民もデジタル人民元のウォレットを通じて金融サービスを享受し、海外から中国へ一時的に訪れる人もウォレットを作れるようにする。「支払いと同時に入金」となるデジタル人民元は、企業にとって大きな利便性をもたらし、資金の回転効率向上につながる。

 また、羅局長は「人民元紙幣とデジタル人民元は長期的に共存していくだろう」と分析。中国の広大な領土、人口、多民族性、地域の発展の違い、社会環境、住民の支払い習慣、年齢構成、セキュリティーなどの要因から、紙幣による支払いは継続されていくとみている。

 デジタル人民元を実施する場合、セキュリティーとプライバシーの問題も焦点だ。中国人民銀行の範一飛(Fan Yifei)副総裁は「デジタル人民元の違法コピーや偽造が不可能な技術を確立し、さらに多元的なセキュリティーシステムを構築する。自分自身でデータを制御できる分散型デジタルIDや、厳しいID検証プロセスに基づくゼロトラスト・セキュリティーなど、個人データを保護する技術開発も進めている」と説明する。

 また、プライバシーの観点からデジタル人民元システムは「少額は匿名、大金は法律に従って追跡可能とする」原則に従う。デジタル人民元が電子詐欺やギャンブル、マネーロンダリング(資金洗浄)などの違法行為に使われることを防ぐ。範副総裁は「デジタル人民元システムは過度に情報を収集せず、法律や規制に基づく場合を除いて第三者や別の監督部門に情報を提供することはない」と説明している。(c)CNS-経済日報/JCM/AFPBB News