【8月9日 AFP】英国で、牛結核(bTB)検査で陽性反応が出たため当局から殺処分を命じられたアルパカの「ジェロニモ(Geronimo)」を救おうと、助命嘆願の署名運動が広がっている。英政府は、陽性反応が出た以上は安楽死させなければならないと主張している。

「ジェロニモを救え──科学的根拠なく健康なアルパカを殺すのはやめて」と題した署名運動を展開しているのは、飼い主で獣医師のヘレン・マクドナルド(Helen Macdonald)さん(50)。今月初めにキャンペーンを立ち上げると、わずか6日間で8万人分を超える署名が集まった。

 ジェロニモはニュージーランド生まれの雄のアルパカ。イングランド西部グロスターシャー(Gloucestershire)の農場でアルパカの繁殖を行っているマクドナルドさんは、陽性と判定された2回の血液検査について、信頼性が低いとして異なる診断方法での再検査を要求している。

 マクドナルドさんは、2016年にジェロニモが自分の農場にやって来てからツベルクリン接種をしてきたため、検査で偽陽性反応が出た可能性があると主張。また、環境・食料・農村省による牛結核検査は、アルパカを対象とした精度評価を一切行っていないと指摘している。

 マクドナルドさんはジョージ・ユースティス(George Eustice)環境・食料・農村相について、「もし検査をきちんと行わないまま健康な動物を全世界の前で殺そうとしているのなら、非常に遺憾だ」と述べた。

 ユースティス氏は、当局が用いたのは「専門性も信頼性も高い検査方法」であり、ジェロニモの殺処分は免れないと反論している。

 マクドナルドさんは殺処分の撤回を求めて裁判も起こしたが、英高等法院は先月、「病気の疑いがある」との環境・食料・農村省の判断を支持し、マクドナルドさんの訴えを退けたという。

 署名運動のページによると、高等法院は8月5日にジェロニモの殺処分を認める令状を再び出した。このままだとジェロニモは令状が出てから30日以内に殺処分されることになるが、マクドナルドさんは、ユースティス氏にはジェロニモの命を救う権限があると訴えている。

 ジェロニモの窮状は、国内最多発行部数を誇る大衆紙サン(Sun)が6日に1面で報じ、大きな注目を集めた。ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相も騒動に巻き込まれているが、首相報道官はジョンソン氏が介入することはないと明言した。(c)AFP