【8月10日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の最中に行われた東京五輪について、英国の五輪関係者が、開催を疑問視する声が間違いだと証明できたと話した。一方で別の関係者は、実施できたのは「奇跡」だと表現した。

 今回の東京五輪は、史上初めて1年延期の判断が下され、さらにほとんどの会場で無観客となったが、それでも出場選手は見事なプレーを披露し、会場の雰囲気が足りない影響はあまりないように見えた。実際に競技が始まると、五輪に懐疑的だった国民も直接目にすることはできないながら、徐々に大会を歓迎するようになった。

 英国オリンピック委員会(BOA)のヒュー・ロバートソン(Hugh Robertson)会長は、「懐疑派は間違いだったことが証明された。世界は極めて厳しい18か月を過ごしていたが、世界中から選手が集まり、記憶に残る祭典をつくりあげた」と話し、「今回の五輪は、想像しうる限り最も難しい状況で開催されたし、主催者は見事だった」と称賛した。

 過去に国際オリンピック委員会(IOC)でマーケティング部門の責任者を務めていたマイケル・ペイン(Michael Payne)氏も、今回の異例の五輪は「未来への明るさと希望」をもたらしたと信じている。

 開幕前の日本では、新型コロナの感染がかつてないレベルで拡大し、緊急事態宣言も出る中で、五輪開催に反対する世論の声は根強かった。ペイン氏は「開催できたのはまったくもって奇跡だ」と驚き、「日本の人たちがやり遂げたのも奇跡なら、パンデミックの中でIOCが選手を集め、五輪を開催し、未来への明るさと希望を与えたのも奇跡だ」と振り返った。

 IOCの古参メンバーで、各国オリンピック委員会連合(ANOC)の幹部を務めるグニラ・リンドベリ(Gunilla Lindberg)氏は、開幕直前でも開催される確信が持てなかったと認めている。感染症が五輪に影響したのは今回が初めてではなく、前回2016年のリオデジャネイロ五輪でも主催者はジカ熱への対応を強いられたが、今回はこれまでにない「最悪」の状況だったとリンドベリ氏は言う。

 これまで夏季、冬季を合わせて26の五輪に携わってきたリンドベリ氏は、「準備の難しさがあり、開幕2週間前の段階でも、開催されるかは誰にも分からなかったはずだ」と話し、「IOCも日本も答えを持っていなかった。私たちも大混乱になると思っていた」と明かした。

 ペイン氏はほぼ無観客での開催になったことを残念がり、主に政治的な理由で「日本国民が誰より割を食った」と話した。しかしペイン氏もリンドベリ氏も、今回の大会で日本での五輪の人気ぶりが改めて証明できたと感じている。

 ペイン氏は「日本の選手が金メダルを取り始めた瞬間、視聴率も一気に上がった。日本の人たちはリビングで五輪を楽しんだ」と話し、「会場で楽しめなかったことは残念だが、それでもボランティアやスタッフは夢のようだった、最高だったと言っていた」と続けた。

 リンドベリ氏も、逆風の中で五輪が成功したことは「五輪の精神にとっても良かった」と話している。(c)AFP/Pirate IRWIN