【8月6日 AFP】日本は世界有数の高齢化社会として知られるが、東京五輪の運営に90歳代を含めたシニアのボランティアが、新型コロナウイルスの恐怖を振り切って参加している。

 日本の首都東京が初めて五輪を開催したのは57年前の1964年。そのとき、幼かった加藤隆(Takashi Kato)さんと一緒にテレビで開会式を見ていた彼の母親が泣きだした。

 加藤さんの両親は第2次世界大戦(World War II)を生き抜き、約20年後、日本が五輪を開催することは母にとってスポーツを超える意味を持っていた。

「すみません、この話をすると涙ぐんできちゃって」と加藤さんは、あふれる感情を抑えるように語った。「母親が泣いているのを初めて見た」

 その思い出は加藤さんから離れず、日本で2度目の開催となる夏季五輪のボランティアになる動機の下地になった。

 元数学教師の加藤さんは現在62歳。だが一部のボランティアと比べればほんのヒヨコかもしれない。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)によると、五輪とパラリンピックに従事する約7万1000人のボランティアのうち、1万5000人近くは60歳以上だ。80歳代が139人、90歳代も3人いる。

 今回、数多い年配ボランティアの存在が目に付く。五輪でおなじみの無給奉仕の一団は、通常、世代的にもっと若い。

 これはボランティアに限った話ではない。都内やそれ以外に散らばる会場で、セキュリティーや食事提供、輸送など有給のワークフォースにも多くのシニア世代が携わっている。

 日本の人口動態なら当然かもしれない。公式統計によると、日本は世界最高齢国であり、人口の約28パーセントが65歳以上だ。

 実のところ加藤さんは、五輪で働くにあたり新型コロナに感染する危険性も考えた。高齢者の方がウイルスによる影響が大きい。

「今回のコロナの件でどうしようかなというのは結構悩んだ」と明かした。「でも最初にやろうと決めたことに素直に従おうと(決めた)」。加藤さんは、さらに2024年のパリ大会も念頭にある。

「できれば今度のパリ五輪にもボランティアで参加したい」「でも、英語もできなければフランス語もできないのではみんなに迷惑をかけちゃうから、家で応援しています」