【8月4日 AFP】2日の東京五輪、重量挙げ女子87キロ超級で、トランスジェンダー選手として歴史的な五輪初出場を果たしたニュージーランドのローレル・ハバード(Laurel Hubbard)が、現役引退の意向を発表した。

 2日の競技で五輪デビューを飾ったハバードは、スナッチを3回連続で失敗し、最高の大舞台での挑戦は短時間で幕を閉じたものの、「胸がいっぱい」になった様子のその姿は、社会から取り残された人たちにとって歴史的な瞬間だと活動家に称賛された。

 その一方で、トランスジェンダー選手が女子スポーツに参加することは大きな議論も呼んでいた。そして4日、プライバシーを重視するハバードは、注目を集める立場から退くつもりだと明かした。

 現在43歳と、多くの出場選手より20歳以上も上の年齢で五輪を戦ったハバードは、引退の理由について「年齢の影響を隠せなくなった。正直にいえば、しばらく前から隠せなくなっていたと思う」と話し、「私がこのスポーツを続けてこられたのは、何はなくとも大量の痛み止めを使ってきたからで、多分一線を退き、別の何かに集中することを考えるときが来たのだと思う」と続けた。

 またハバードは、包括性に関する方針を採用し、自身の五輪参加を認めた国際オリンピック委員会(IOC)の「倫理面でのリーダーシップ」をたたえ、「自分が何かの手本を目指せるとは思えないが、私の存在が何かの励みになるのであればうれしい」とコメントした。

 ハバードのような選手が大会に出場することには根強い批判がある。男性として成長期を過ごし、筋肉量や肺の大きさといった男性としての肉体的な利点を備えたまま、30代で性別変更した選手が出場すると、女性として生まれた選手が不利な戦いを強いられるという懸念だ。

 IOCは2003年、大会に出場できるトランスジェンダーは性別適合手術を受けた選手のみとするガイドラインを定めたが、2015年にこの要件を廃止し、男性ホルモンのテストステロン値を下げれば出場できるようにした。この件について、IOCは東京五輪後に新たなガイドラインを発表することを予定している。

 ハバードは、自身の五輪初出場で注目された話題について、話し合いが始まることを歓迎し、「もちろん話し合いは必要だ。現時点でもルールはあるが、トランスジェンダー選手と、そうした選手がスポーツに参加する意味について、どんどん新しいことが分かってきている以上、ルールの変更と刷新は間違いなくあるだろう」と話している。(c)AFP