【8月5日 CNS】わずか10平方メートルの部屋に2台のベッドとテレビだけが備え付けられ、家賃は1日あたり100元~300元(約1700~5074円)。窓やエアコンはない。管理しているのは、非正規の仲介業者だ。上海市の復旦大学(Fudan University)付属がん病院の周辺には、地方から訪れたがん患者と付き添いの家族向けの短期賃貸住宅が林立している。高度な医療を求めて病院の診察を順番待ちしており、こうした施設は「求医(医療を求める)宿」と呼ばれている。

 2020年の統計によると、中国では年間で新たに392万9000人のがんが判明している。発生率は世界平均に近いが地域間の医療水準に差があり、治療のため大都市に訪れる人が増えている。

 上海市のほか、北京市、広州市(Guangzhou)、西安市(Xi’an)、南京市(Nanjing)などのがん病院の周辺にも「求医宿」がある。がん患者と家族にとって便利な反面、潜在的なリスクもある。賃主は非正規業者が多く、規制に違反した賃貸方法や違法な住宅改造を行っているため問題がたびたび発生している。

 上海市では賃貸住宅市場の全体的な傾向を反映し、「求医宿」の賃貸料が大幅に引き上げられた。復旦がん病院近くの東安一村、二村、三村の宿はほぼ満室となり、東安三村で見つけた60平方メートルの物件で家賃は8500元(約14万3766円)に上る。

 ある仲介業者は「この一帯は周囲の地域より家賃が高い。治療に便利な人気エリアなので仕方がない」と説明する。病院周辺はほとんど短期賃貸物件で、「1部屋あたり1日250元(約4228円)、60平方メートル3部屋なら1日750元(約1万2685円)。月ぎめ家賃よりもはるかに収益性が高く、それでも供給が不足している」という。

 復旦がん病院徐匯分院には毎年100万人以上のがん患者が訪れており、地方から訪れた患者が多く含まれている。病院公式サイトによると、2019年の通院者数は157万2900人、入院者数は10万7000人、手術を受けた人は5万1400人。患者の平均入院日数は4.9日で、病院の運営効率は全国で上位にランクされている。

 病院周辺の住宅は1980~1990年代に建てられ、室内は狭くて古いものが多い。だいたいは50平方メートルの部屋を三つに分け、6人が宿泊できるようにしている。窓やエアコンもない劣悪な環境はがん患者にとってさらなる負担となる。 1部屋を九つの仕切りで分けたり、6平方メートル足らずのバルコニーを「個室」にしたりという特に悪質な事例も明らかになっている。

 地方から来た患者の基本的な生活環境に配慮し、大型病院周辺の「求医宿」を適正化することは、都市管理の課題となっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News