【8月1日 AFP】インターネット上の性差別的な中傷にも一切動じず、東京五輪で韓国女子アーチェリーの安山(アン・サン、An San)は三つの金メダルを獲得した。安は、子どもの頃から男女差別と闘い続けてきた。

 20歳の安は混合団体、女子団体、個人の3種目で金メダルを獲得し、アーチェリーの歴史に名を刻んだ。1回の夏季五輪で三つの金メダルを獲得したのは韓国人では初、女子選手が五輪アーチェリーで三つの金メダルを獲得したのは1904年以来となる。

 安が初めて大きく報じられたのは、その驚くべき功績だけが理由ではなかった。

 むしろ、安のショートヘアに対する一部の韓国人男性からの中傷によるところが大きかった。中傷に強く反発した女性たちからは、安を支持する声が殺到した。

 中傷した男性たちは、安の髪形は安がフェミニストである証しだと主張し、謝罪を求め、メダルの返上すらも要求した。

■競技との出会いで男女差別

 安の金メダル獲得までの道のりは、決して楽なものではなかった。

 安がアーチェリーを始めたのは小学生の時。学校で新設されたアーチェリーチームは男子限定だったが、安は自分も教わりたいと訴えた。

 安のコーチが韓国のラジオで語ったところによると、校長は当初、アーチェリーがしたいのならば転校するよう安に助言した。

 しかし、安はめげることなく、最終的には学校が安のために女子チームを結成したという。

 コーチは安について、いつもは「とても陽気でユーモアのセンスがある」が、試合になると非常に落ち着いて冷静になると語った。

 安は高校生だった2018年、テレビの取材に対し、フィギュアスケートの金妍児(Yu-Na Kim、キム・ヨナ)さんのように「スポーツを全く知らない人」にも知られるアスリートになりたいと語っていた。(c)AFP/Peter Stebbings, with Claire Lee in Seoul