【7月29日 AFP】英富豪リチャード・ブランソン(Richard Branson)氏の創業した宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が今月行ったテスト飛行は、万々歳で終わるはずだった。

 ところが、同社は宇宙船「スペースシップツー(SpaceShipTwo)」の2号機「ユニティ(VSS Unity)」の炭素排出量に対し、かなりの非難を浴びることとなった。

 米富豪ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)氏の宇宙開発企業ブルー・オリジン(Blue Origin)が20日に行った同社初の有人宇宙飛行、さらにイーロン・マスク(Elon Musk)氏率いる宇宙開発企業スペースX(SpaceX)が9月に計画している民間人のみの宇宙飛行など、まだ生まれて間もない宇宙観光産業は話題が続く。

 一方で宇宙観光産業は、環境に与える負荷をめぐる難問に直面もしている。

 今はまだロケットは、著しい汚染が起きるほど頻繁には打ち上げられていない。「商用航空を含めた人間の他の活動と比較しても、二酸化炭素(CO2)排出量は全く微々たるものです」と、米航空宇宙局(NASA)のギャビン・シュミット(Gavin Schmidt)上級気候顧問は語る。

 それでも宇宙観光産業が大きく成長しようとする中、科学者の間では長期にわたる悪影響の可能性を心配する声がある。特に懸念されているのが、未知の部分が多い、成層圏にあるオゾン層に与える影響だ。

 ヴァージン・ギャラクティックは、創業者のブランソン氏が数分間飛行するために化石燃料を大量消費する宇宙船を飛ばしたことで、米CNNや経済誌フォーブス(Forbes)の論評、さらにソーシャルメディアのユーザーらからたたかれている。

 一方、ヴァージン側は今回の炭素排出量について、ロンドン-ニューヨークのビジネスクラス便とほぼ同じ量だと主張している。

 同社は「すでにテスト飛行での炭素排出量を相殺する措置を取った。さらに将来、顧客を乗せて飛行する際の排出量を相殺し、わが社のサプライチェーンのカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量をCO2に換算した数値)を減らす方法を検討している」と、AFPに文書でコメントしている。

 とはいえ、仏宇宙物理学者ロラン・ルゥク(Roland Lehoucq)氏らが学術・研究ニュースサイト「カンバセーション(The Conversation)」に発表した分析によると、大西洋横断飛行が数百人を運ぶのに対し、ヴァージンの宇宙船は6人で乗客1人当たりの排出量は4.5トンに上るという。これは平均的な乗用車が地球を1周する量に相当する。また、パリ協定(Paris Agreement)の目標を達するために推奨される1人当たりの年間排出量の倍以上だ。

「均衡を大きく欠く問題です」とコロラド大学ボルダー校(University of Colorado, Boulder)の大気科学者ダリン・トゥーイー(Darin Toohey)氏はAFPに語った。

 子どもの頃から「宇宙計画とともに育ち、それが科学の世界に入るきっかけ」だったと話すトゥーイー氏だが、宇宙飛行にたとえただで誘われても乗り気になれないという。「そうすると自分自身のフットプリントがとてつもなく大きくなると分かっているからです」