■よりクリーンな燃料を求めて

 ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」は、合成ゴムの一種を燃料として使用し、強力な温室効果ガスである亜酸化窒素の中で燃やす。この燃料は、30~50キロ上空の上部成層圏にブラックカーボン(黒色炭素)を送り込む。

 ブラックカーボンの粒子はさまざまな悪影響を及ぼす。例えば、太陽光をはね返してしまうために「核の冬」のような地球冷却が起きる。あるいは化学反応が加速され、有害な放射線から人間を守っているオゾン層が破壊される。

「危険な段階にいるのかもしれません」と指摘するトゥーイー氏は、宇宙船が頻繁に打ち上げられるようになる前にこうした影響に関するさらなる科学的調査を求めている。

 ヴァージンは年間400回の宇宙船飛行を目指しているとされる。

 一方、ベゾス氏のブルー・オリジンは、ヴァージンのスペースシップツーと比べてはるかにクリーンだと主張している。ブルー・オリジンでは液化水素と液化酸素を燃料とし、生成された水は燃焼を経て水蒸気となる。

 同社はツイッター(Twitter)で、米航空宇宙研究開発コンサルティング企業エアロスペース(Aerospace Corp)の科学者マーチン・ロス(Martin Ross)氏の最近の論文を引用している。

 ロス氏の論文によると、ブルー・オリジンの再使用可能な垂直離着陸ロケットは概算で、ヴァージンの宇宙船と比べてオゾンの消失は100分の1、気候強制力は750分の1程度だという。

 だからといって、ブルー・オリジンの宇宙船も完全にクリーンではない。「液化酸素や液化水素を作るには電気が必要です」とロス氏はAFPに指摘した。ロケット推進剤をつくるために必要な電気量は、サプライチェーンをさかのぼって計算できると言う。「それをどれだけさかのぼるかによります」