【7月22日 AFP】ギリシャ系住民とトルコ系住民の対立から南北に分断されているキプロス(Cyprus)島をめぐり、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領が「2国家共存」を唱え、欧米諸国の激しい批判を招いている。米国は、国連安全保障理事会(UN Security Council)での対応を要請する方針を示した。

 キプロス島は、1974年に当時のギリシャ軍事政権がキプロス併合を狙って画策したクーデターを機にトルコ軍が侵攻して以来、ギリシャ系住民の多い南部の欧州連合(EU)加盟国キプロスと、世界でトルコのみが独立国家として承認している北部の北キプロスに分断されている。

 キプロスと国連(UN)は、ギリシャ系とトルコ系の二つの自治体からなる連邦制統一国家の樹立を目指している。

 しかし、エルドアン大統領は20日、やはり南北で分断されたキプロスの首都ニコシアの北側を訪問し、半世紀にわたる取り組みは失敗に終わったと主張。「二つの民族と二つの国家が対等な立場にある」べきだと宣言した。

 エルドアン大統領の盟友で北キプロス「大統領」のエルシン・タタル(Ersin Tatar)氏も、かつてキプロス随一のリゾート地だったが1974年のトルコ侵攻でギリシャ系住民が逃げ、トルコ軍の占領下でゴーストタウン化しているバローシャ(Varosha)の再開発計画を発表。まず町の3.5%がトルコ軍の管理下から外れると説明した。

 こうした動きを受け、米国務省のビクトリア・ヌランド(Victoria Nuland)国務次官補(欧州・ユーラシア担当)は21日、エルドアン大統領の発言はキプロス問題の解決に向けた国連主導の取り組みに「冷や水を浴びせる」ものだと懸念を表明した。

 アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)国務長官も同日、キプロスのニコス・フリストドゥリディス(Nikos Christodoulide)外相と電話で協議し、バローシャ再開発は「容認できるものではなく、国連決議にも反する」と述べた。

 アントニオ・グテレス(Antonio Guterre)国連事務総長も報道官を通じて、一連の動きを「深く憂慮している」と表明。「緊張を誘発する一方的な行動をすべての当事者が慎む」よう強く求めた。(c)AFP/Shaun TANDON