【7月19日 AFP】 ミャンマーでは、国軍のクーデターに抗議する不服従運動に参加した医療従事者らが国軍の運営する病院に戻らない中、新型コロナウイルス感染が全国で急拡大している。自宅で亡くなる感染者が急増し、ボランティアが民家を回って遺体を火葬場へ運んでいる。

 最大都市ヤンゴンでは毎朝早くから、タン・タン・ソー(Than Than Soe)さんのもとに遺族からの依頼の電話が次々と入る。所属するチームは連日30~40人の遺体を引き取っており、「他のチームも同じような状況だと思う」と話す。

 全国の病院には、医師の姿も患者の姿もない。2月のクーデターで実権を握った国軍に対するストライキの影響だ。

 クーデターへの怒りと、軍事政権の協力者だと思われたくないとの理由から、多くの人が国軍運営の病院へ行くことを避けている。このため、ボランティアが酸素の調達や火葬場への遺体搬送を担っている。

 ヤンゴン各地では感染者の家族が大勢、軍事政権による夜間外出禁止令を破り、酸素ボンベを充填(じゅうてん)しようと必死になっている。

 ミャンマーの感染者数は、5月初旬は1日当たり50人程度だったが、17日には当局発表で約5500人に上った。だが専門家は、実際の感染者数ははるかに多い恐れがあると指摘している。

 クーデター以前に最前線で新型コロナウイルスと闘っていた医療従事者は、初期の反クーデター大規模デモを主導していたことから国軍の標的になっている。ワクチン接種計画の責任者を含む保健当局トップらは拘束され、その他多くの関係者は拘束から逃れるために身を潜めている。

 母親が感染したためヤンゴンから北西部カレー(Kalay)に戻って来た女性は、「クーデター前のコロナウイルス対策は適切で、政府は頻繁に通知や発表を出していた」と話す。「しかし、クーデターが起きてからは私たちは何もかもが怖くなり、コロナウイルスにあまり注意を払わなかった。(中略)そして突然、(ウイルスが)戻ってきた」と述べ、「今は感染対策は存在しない」と語った。

 ミャンマーの人権問題に関する国連(UN)特別報告者は先週、同国が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のスーパースプレッダー国になる」恐れがあると警告した。(c)AFP