【7月17日 AFP】英政府が19日にイングランドでの新型コロナウイルス規制をほぼ全面解除する方針をめぐり、医療専門家らは16日、その是非について緊急の会議を行い、無謀な考えで科学的な根拠がない政策だと指摘した。参加者の一人は、解除が事実上の殺人を意味すると述べ、強い懸念を示した。

 英国内で感染力の強い変異株「デルタ株」が猛威を振るう中、ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相は今週、感染流行の最悪の時期は脱した「可能性が極めて高い」と述べ、イングランドで導入されているマスク着用義務やソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)といった規制の解除を19日に予定通り実施すると発表。

 規制解除の根拠として、ジョンソン氏は成人の3分の2が2回のワクチン接種を完了していると指摘するが、イングランド首席医務官のクリス・ホウィッティ(Chris Whitty)氏は、感染拡大のペースが「非常に恐ろしい」水準に向かっていると警鐘を鳴らした。

 会議に参加した各国の専門家らもジョンソン氏に対して厳しい意見を述べており、米科学者のウィリアム・ヘイゼルティン(William Haseltine)氏は「私はこれまで、集団免疫の戦略は事実上の殺人だという考えを表明してきた」と訴えた。

 ヘイゼルティン氏は、集団免疫獲得には何千人もの死者が出る可能性を承知の上での政策実施が求められると述べ、「政策としては大惨事だ」とした。

 デルタ株のまん延を放置して集団免疫を獲得する政策を実施する考えを英政府は否定しているものの、今後数週間で1日当たりの新規感染者が10万人に増加する可能性があることは認めており、医療現場がさらに逼迫(ひっぱく)する可能性も出てくる。

 一部のメディアで「フリーダムデー(自由になる日)」と呼ばれている19日には、イングランドで公共の場での集まりに関する大半の規制やマスク着用、在宅勤務を義務付けた措置が撤廃され、ナイトクラブなどの営業再開も許可される。ジョンソン氏は、市民に警戒を怠らないよう呼び掛けながら、感染防止を個人の責任に任せる方針を示している。(c)AFP/Jitendra JOSHI