【7月13日 AFP】現場に派遣されたチームに与えられた任務は「草を食べろ」。それだけだ。米カリフォルニア州では、毎年発生する山火事に立ち向かう武器としてヤギが人気を集めている。

 7月の暑い朝、ロサンゼルス郊外グレンデール(Glendale)の丘陵地でヤギ80頭が一帯の草を食べていた。乾燥した草に火が付くと周囲の住宅に延焼する恐れがあるため、これも大切な除草作業の一環となる。

 ヤギたちの活動は極めて重要なものになってきている。昨年カリフォルニア州で発生した山火事は近年最悪の規模となり、広大な土地が焼失した。

 気候変動や干ばつの影響で、大規模な山火事が数か月間続く事態が常態化しているのではと、当局は懸念を示す。そのような状況のなか、役に立つものは何でも歓迎されるのだ。

 グレンデールのジェフリー・ラグーサ(Jeffrey Ragusa)消防署長は、「調べてみればみるほど、ヤギ(の導入)がいかに効果的で環境に優しいかが分かった」と話す。

 ヤギの旺盛な食欲は二つの目的を果たしてくれる。ラグーサ氏によると、引火しやすい草をヤギが食べることで山火事の広がりが抑えられ、また消防隊員が活動しやすい通路もできるという。

 人が行う作業の負担を減らしてくれるという意味でも、ヤギの助けは有益だ。山火事が発生しやすい季節になる前とその最中に、当局は人を使って燃えやすい草木を取り除き、火事が拡大しないよう緩衝地帯を設けているが、その多くは手作業で、炎天下に険しい地形で行わなければならない。また山火事が多発する期間も以前より長くなっている。

 ラグーサ氏は、「作業員がけがをする危険性は常にある」と話し、「でも、まだヤギがつまずいて転んだところは見たことがない」と笑顔で続けた。

 しかし、ヤギは放っておくと何でも食べてしまうので、この戦略にはリスクも伴う。

「ヤギの動きには絶えず目を配っている」と、グレンデールにヤギを派遣したセージ・エンバイロンメンタル・グループ(Sage Environmental Group)の創業者、アリッサ・コープ(Alissa Cope)氏は話す。同社は、動植物の生息環境の回復や環境計画を専門としている。

「過放牧(草地の再生能力を超えた家畜の放牧)はヤギを導入する際に見られがちなマイナス面だが、そうした問題が起きていると思える場所があればヤギを移動させる」と述べ、電気柵の使用や干し草で誘う方法を例に挙げた。

 同社は、ヤギがこうした作業でどれくらいのお金を稼いでいるかは明らかにしていないが、ヤギの派遣費用は、当局が人間の作業員に支払う金額と同程度で、さらに環境への負荷はより少ないとしている。(c)AFP/Ines BEL AIBA