【7月13日 AFP】11日に行われたサッカー欧州選手権(UEFA Euro 2020)決勝のイタリア対イングランド戦で、PKを外したイングランドの3選手が人種差別的な暴言の標的にされている問題を受け、英政府やサッカー界の上層部は12日、不快感をあらわにした。

 イングランド代表を率いるギャレス・サウスゲイト(Gareth Southgate)監督は、オンライン上の悪質な暴言に関して「許し難い」と報道陣に述べた。また、「一部は海外からのものだと聞いているが、国内からもあるらしい」と明かし、「われわれは人々が団結し、代表チームがあらゆる人々のために立ち上がるための誘導灯となっている」と強調した。

 決勝のPK戦で失敗したマーカス・ラシュフォード(Marcus Rashford)、ジェイドン・サンチョ(Jadon Sancho)、ブカヨ・サカ(Bukayo Saka)の3選手は、インスタグラム(Instagram)やツイッター(Twitter)で、大半が海外のいわゆる「荒らし」などからと思われる人種差別的暴言を浴びている。

 その一部はイングランドファンからのもので、人種差別的な言葉を使用しながら3選手のせいで負けたと批判しているほか、「がんばれイタリア(forza italia)」のハッシュタグが付けられた攻撃的な内容も含まれているという。

 イングランドサッカー協会(FA)の会長で、キャサリン妃(Catherine, Duchess of Cambridge)とジョージ王子(Prince George)とともに決勝を観戦したウィリアム王子(Prince William)も、今回の人種差別について「気分が悪くなった」と述べた。

 しかし、メッセージの大多数は選手たちを支持するものとなっており、国内が新型コロナウイルスの大流行に襲われる中で、国を一つにまとめる活躍を見せたと称賛されている。

 ボリス・ジョンソン(Boris Johnson)英首相は会見で、チームに対して「歴史を打ち立てた」と同時に「この国に喜びをもたらした」とすると、「一部の選手に向かって人種差別を行っている連中には、『恥を知れ。自分たちが出てきた岩の下にはい戻ってほしい』と言おう」と述べた。

 サッカー選手に対するSNS上での暴言をめぐっては、イングランドの選手が欧州選手権の決勝を含め試合前に膝をつくなどして、大会で人種差別に反対する強いメッセージを発信していた。

 また、ツイッター側が問題のアカウントを削除したり、フェイスブック(Facebook)もインスタグラムのプラットフォームに関して新たな対策を打ち出したりするなど、さまざまな動きが出ていた。

 しかし、ジョンソン首相は当初、保守党の閣僚議員とともに「政治的なジェスチャー」には懐疑的な姿勢を示しており、選手たちにブーイングを浴びせたイングランドファンの言論の自由を擁護して厳しい批判にさらされていた。(c)AFP/James PHEBY, Jitendra JOSHI