【7月8日 東方新報】中国では夏休みの映画シーズンを迎え、約40作品が上映される。7月1日に中国共産党創立100周年の記念日を迎え各地で祝賀イベントが盛り上がる中、エンターテインメント要素も取り入れた「愛国映画」が主力となっている。

 一番の注目作は、1921年7月23日に上海で中国共産党第1回党大会が開かれる過程を描いた『1921』。7月1日から公開が始まった。平均年齢28歳の結党メンバー13人が党大会を開く姿を青春群像劇のように表現し、スパイ活動やアクションシーンも取り入れている。出演者は、『グレートウォール』『空海-KU-KAI-』などに出演している人気俳優・黄軒(Huang Xuan)や、映画やテレビに引っ張りだこの女優・倪妮(Ni Ni)ら中華圏スターが勢ぞろいしている。

 中国共産党創設の主要メンバーの1人、李大釗(Li Dazhao)の伝記映画『革命者』も話題作だ。社会主義運動の先駆者として、革命の志士たちを率いて奮闘する姿をドラマチックに描いている。中国映画界の大御所、張芸謀(Zhang Yimou、チャン・イーモウ)氏と長女の張末(Zhang Mou、チャン・モー)氏が共同で製作する『狙撃手』は、朝鮮戦争に従軍した中国義勇兵のスナイパーが主人公だ。

 現代版愛国映画として、湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)で新型コロナウイルスと戦った最前線の医療従事者の実話を基にした『中国医生(英題:Chinese Doctors)』も上映。航空機事故で大惨事を防いだ実話をテーマにした2019年のヒット映画『中国機長(The Captain)』のスタッフが満を持した作品だ。

 中国映画批評学会の饒曙光(Rao Shuguang)会長は「夏休み期間中は、学生ら若者層の選択が興行収入を左右する」と解説。エンタメ色を取り入れた愛国映画が増える形となっている。

 成長著しい国産アニメの新作も相次ぐ。人と妖怪の境遇を乗り越えるラブストーリーで2019年に大ヒットした『白蛇:縁起(英題:White Snake)』の続編『白蛇2:青蛇劫起(英題:White Snake2)』や、始皇帝陵の兵馬俑に題材を得たアクションファンタジー『俑之城(英題:Realm of Terracotta)』、中国初のSFアニメ大作といわれる『冲出地球 Rainbow Sea Fly High』など話題作がめじろ押しだ。

 饒曙光会長は「コロナ禍でハリウッド(Hollywood)の大作がまだ上映されていない状態が続き、多くの国産映画が作られる。夏休みは上映期間が長いため、予想と異なる人気作が登場する可能性がある」と話す。

 中国の映画市場は近年、興行成績を毎年更新する勢いだったが、2020年はコロナ禍のダメージを受けた。新型コロナウイルスは現在おおむね抑制されているが、今年は春節(旧正月、Lunar New Year)などの連休中は大入りで平日は観客が伸び悩み、中国メディアは「炎と氷の繰り返し」と表現している。この夏休みで多くの市民が映画館を訪れる習慣を取り戻すかが注目されている。(c)東方新報/AFPBB News