中国・杭州にアニメ・漫画博物館が誕生 急成長する中国アニメ業界のシンボルに
このニュースをシェア
【7月7日 東方新報】中国のアニメ・漫画の歴史から最新映像技術までを紹介する「中国アニメ・漫画博物館」が6月26日、中国・浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)にオープンした。中国メディアは「国字号(国家のお墨付き)の博物館」と呼んでおり、成長著しい中国アニメ業界のシンボル的存在となりそうだ。
白い落花生のような外観は「祥雲(めでたい雲)」をイメージしており、延べ床面積は約3万平方メートルを誇る巨大施設。四つの常設展示ホールを設け、中国のアニメ・漫画の歴史、産業の発展、今後の展望を展示・解説している。
中国ではアニメと漫画は「動漫」とひとまとめに呼び、主にアニメを指すことが多い。歴史の展示では、1941年公開の中国初の長編アニメ映画『鉄扇公主(英題:Princess Iron Fan)』の資料を展示。日本でも『西遊記 鉄扇公主の巻』の名で公開され、学生時代の手塚治虫(Osamu Teduka)氏が感銘を受けたことで知られている。1980年代に公開された中国人にとって懐かしのアニメ『黒猫警部』『月をすくう猿』『三人の和尚』の紹介もあり、手塚氏が中国を訪れた際に有名アニメ映画監督、厳定憲(Yan Dingxian)氏と一緒に描いた孫悟空と鉄腕アトムが握手するイラストを見ることもできる。
最新技術の展示では、大型パネルに多くのアニメ作品がシャボン玉のように並び、来場者がタッチすると作品が拡大するコーナーがある。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)のゴーグルをつけたゲーム体験、振動や風を感じる5Dシアターなど、どこでも多くの来場者が夢中になっている。
杭州市は、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)や「荒野行動」などの人気ゲームを運営する網易(NetEase)が拠点を置くデジタル先進都市。2005年からは毎年、「中国国際アニメ・漫画フェスティバル」を開催し、アニメ産業の振興にも力を入れていた。この中国最大のアニメフェアには日本や欧米のアニメ・漫画関連会社が集まり、高額の商談が成立している。新しい博物館は「アニメ都市・杭州」の象徴になることが期待されている。
中国では古くは日本のアニメ『一休さん』が大人気となり、『聖闘士星矢(Saint Seiya)』や『SLAM DUNK(スラムダンク)』なども人気を集めた。近年は国産アニメを育成する方針から日本のアニメはテレビではほとんど放映されていない。映画の『名探偵コナン(Detective Conan)』『ドラえもん(Doraemon)』シリーズは今も中国で人気だが、2019年には中国の古典を大胆にアレンジしたアニメ『哪吒之魔童降世(英題:Ne Zha)』が同年の映画興行成績1位に輝くなど、アニメの「自給自足」が進んでいる。中国アニメは海外進出にも力を入れており、2017年に中国アニメ『狐妖小紅娘(邦題:縁結びの妖狐ちゃん」』がTOKYO MXに放送されるなど日本でも中国のアニメが放送されるようになっている。
中国で最大級のアニメ・漫画博物館の誕生は、中国アニメ業界の進撃ぶりを表しているようだ。(c)東方新報/AFPBB News