【7月6日 東方新報】中国で新しいテーマパークが次々と登場している。「パクリ」「つまらない」と言われた時代から、豊富な資金力や技術力、国産コンテンツの増加によりオリジナル化が進んでいる。

 中国のテーマパークというと、2007年に騒がれた「ニセディズニー(Disney)騒動」が今も記憶に残っている人も多いだろう。「ディズニーは遠いから石景山(Shijingshan)に行こう!」をキャッチフレーズにした北京市の石景山遊楽園は中央にシンデレラ城のような建物がそびえ立ち、ミッキーマウス(Mickey Mouse)などに似たキャラクターが登場して物議を醸した。

 中国でテーマパークの歴史は30年ほど。1990年代に国内や世界の名所をミニチュア化した観賞型テーマパークが登場し、2000年代に入ると大型遊園地タイプが増えてきた。しかし、パーク全体のテーマ設定がなく、故障した遊具が放置され、園内のあちこちに日本や米国のアニメのそっくりキャラが散見される、といった施設も目立った。

 2010年代に入ると流れが変わってきた。中国の経済成長に伴う豊富な資金力や技術力、国内で育ってきた独自コンテンツを生かしたテーマパークが誕生するようになる。

 テーマパークの設計・経営を手がける企業・華強方特(Fantawild)は、中国の神話を生かしたテーマパーク「方特東方神画」や、大人気の国産アニメ『熊出没(Boonie Bears)』のテーマパークを各地に建設。「東方神画」では神話や西遊記を題材にしたさまざまなアトラクションが楽しめ、「熊出没」ではおなじみの熊の着ぐるみが子どもをお出迎えしている。かつての「パクリーランド」のような光景は見られなくなった。

 映画会社の華誼兄弟(Huayi Brothers Media)は自社作品のコンテンツを生かした「映画村」を各地に開設。中国の宮殿や海外の街並みを再現した巨大セット、大ヒット映画そのままの世界に、来場者が魅了されている。海昌海洋公園(Haichang Ocean Park)は巨大水族館やプールなど「水」をテーマとする大型施設を各地に設けている。仮想現実(VR)やデジタル技術を生かした新しいコンテンツ体験も各施設が導入している。政府もテーマパークの建設を積極支援し、新しい娯楽産業の創成に力を入れている。

 2016年、海外のテーマパークとして中国に初めて上陸した上海ディズニーリゾート(Shanghai Disney Risort)の存在も刺激となっている。来場者の平均滞在時間が10時間という「囲い込み」手法や、スタッフの「おもてなし」マインド、周囲にホテルやショッピングモール、リゾート施設を設ける「丸抱え」戦略などを吸収している。

 しかし2020年のコロナ禍では、各地のテーマパークが休業を強いられ、打撃を受けた。華強方特の純利益は前年比38.8%減の4億8500万元(約83億3861万円)に落ち込み、海昌海洋公園は14億7800万元(約254億1125万円)の損失を記録した。

 中国では新型コロナウイルスはおおむね抑制され、7~8月の旅行客はコロナ禍以前の2019年並みの水準に戻ると予測されている。旅行サイトのアンケートでは、回答者の64%が「この夏に旅行の予定がある」としており、このうち87%が長距離旅行を計画している。テーマパークにとって客の流れを取り戻す大チャンスを迎えている。

 中国テーマパーク研究所の林煥傑(Lin Huanjie)所長は「コロナ禍でも中国の国内総生産(GDP)は安定しており、国民の消費意欲は高い。テーマパークのニーズは今後も高まる」としつつ、「立地が悪い、全体のストーリーの魅力が薄い、コンテンツの更新が少ないといったテーマパークは淘汰(とうた)されていくだろう」と分析している。(c)東方新報/AFPBB News