【7月12日 AFP】マングローブの生える水面から突き出た、細い材木を脚にして立つ家々。

 ブラジル南東部サンパウロ(Sao Paulo)州にある南米最大の港湾都市、サントス(Santos)を流れる川の河口には、ディキダビラジルダ(Dique da Vila Gilda)と呼ばれる同国最大級のファベーラ(貧民街)がある。ビーチ沿いの庭園で知られ、サンパウロの富裕層が週末を過ごすサントスのリゾート地区とは別世界だ。

 ここの水辺は悪臭を放ち、ごみが散乱している。さびた金属とゆがんだ材木でできた家に暮らす住民らは、生き延びるために必死だ。

 ディキダビラジルダのような地区とサントス市内のより裕福な地区との格差はこれまでも明白だったが、新型コロナウイルスの流行でさらに拡大した。

 とはいえ、このブグレス(Bugres)川河口の貧民街では、コロナは数多くの悲惨な現状の一つにすぎない。

 住民のエリエッテ・アウベス(Eliette Alves)さんは「ここにはネズミ、ゴキブリ、デング熱、チクングニヤ熱、何でもあります」と語る。足元では同地区の住民2万6000人が投げ捨てたごみが、悪臭のする水の中に積もっている。

 別の住民、ジュリアナ・ダシルバ・バルボサ(Juliana da Silva Barbosa)さん(35)は、2部屋だけの小さな掘っ立て小屋で6人の子どもを育てるシングルマザーだ。コロナ禍で子守の仕事を失い、今は給付金を受けてどうにかやっている。

 バルボサさんはこれまでコロナには感染していないが、蚊が媒介する感染症のチクングニヤ熱にかかってしまった。ファベーラの住民は密集した不衛生な環境下で、伝染病にかかる危険にさらされている。(c)AFP/Paula RAMON