【6月29日 AFP】米フロリダ州で先週、12階建ての集合住宅が突然崩壊し、11人が死亡した。今も行方不明者150人の捜索が続いている。崩れ落ちたがれきの山から数ブロック離れた場所で、パトリック・ウィリアムソン(Patrick Williamson)さんは必要とする人に飼い犬のグレイシー(Gracie)を付き添わせてあげていた。

 5歳の雌のジャーマンシェパードのグレイシーは、ウィリアムソンさんがイラク戦争に従軍した際に負ったトラウマ(心的外傷)を癒やしてくれた。ウィリアムソンさんは今、グレイシーが、ここサーフサイド(Surfside)の住民の慰めになればと願っている。

「私のためにできたのなら、他の人にもできるはずだと信じている」

 現場で救助活動を続ける団体の一つ、「ユナイテッド・ケージャン・ネービー(United Cajun Navy)」は、セラピー犬を連れて来るようボランティアに呼び掛けた。

 全米事務局長のジェニファー・トビー(Jennifer Toby)氏は、テキサス州とルイジアナ州に壊滅的な被害をもたらしたハリケーン「ハービー(Harvey)」の際、被災者支援には物資の提供以外にも、もっと多くのことが必要だと気付いたと話す。

「街全体が破壊され、何週間も避難所で生活しなければならない状況で、心の支えとなる動物がいるのは本当にありがたいものだ」と同氏はAFPに語った。

 ルイジアナ州から来たトニー・ウェイド(Toney Wad)さんは、ボランティア団体「ケージャン・コースト・サーチ・アンド・レスキュー(Cajun Coast Search and Rescue)」の隊長で、世界中の救助現場で経験を積んだベテランだ。

 3歳になるベルジアンマリノアの「フーダー(Hoeder)」を連れてきた。フーダーの専門は水死した犠牲者の捜索だが、燃やされた遺体の骨片を見つけたこともある。

「犬は純粋な愛情を示してくれる」とウェイドさんは言う。

 28日には犠牲者の家族を訪問した。セラピー犬と飼い主がコミュニティーセンターを出発しようとすると、犠牲者の親族の一人がグレイシーに駆け寄り、涙を流しながらその瞬間を共有していた。

 ウィリアムソンさんは「何事も終わりが重要だ」と語った。「得たものはあるが、それ以上に終わりが必要だと家族が気付いた時に、私たちと過ごした時間は思い出に変わる」 (c)AFP