【6月25日 東方新報】ショート動画アプリ「ティックトック(Tiktok)」の運営で国際的に知られる中国の字節跳動(ByteDance、バイトダンス)が中国の古典籍の保存活動や修復の専門家育成に乗り出した。最先端のインターネット企業が古書の保護に取り組むという組み合わせに注目が集まっている。

 バイトダンスは6月17日、中国国家図書館、中国文物保護基金会とパートナーシップを結び、バイトダンスによる古典籍保存特別基金を設立するセレモニーを行った。バイトダンスは基金に初回寄付分として1000万元(約1億7120万円)を提供。インターネット企業が古典籍の保存に資金援助をするのは中国で初めてという。

 当面の目標は1~2年以内に100冊の貴重な古書を修復する。「中国最大の百科事典」といわれる明代の「永楽大典」の修復が目玉となる。

 中国では、古代から中華民国の時代まで5000万点以上の古典籍があり、そのうち1000万点以上の修復が急務となっている。修復は高度な技術を必要とするため人材の育成には多くの時間と費用が必要だが、社会の関心の低さや資金不足から、専門家の数は圧倒的に不足している。基金では100冊の古書修復と同時に、100人の修復専門員の育成を図る。

 古書をただ修復するだけでなく、研究資料として共有化するため、近年はデジタル化の必要性も高まっている。だが、デジタル化により公開されている古典籍は7万点強にとどまる。バイトダンスはデジタル化を進め、中国で6億人以上が利用するショート動画アプリ「抖音(Douyin)」や、中国の有力ニュースアプリ「今日頭条(Jinri Toutiao)」、動画配信プラットフォーム「西瓜視頻(iXigua)」といった自社グループのコンテンツを通じてデジタル化した古典籍を公開していく。

 日本ではバイトダンスと言えばティックトックのイメージが強いが、同社傘下のサービスは世界150超の国・地域をカバーし、35言語をサポートしており、アクティブユーザーは19億人に上る。米国の巨大IT企業、グーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)の「GAFA」や、中国の百度(Baidu)、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)、騰訊(テンセント、Tencent)の「BAT」に匹敵する存在となりつつある。バイトダンスのてこ入れにより中国の古典籍の保存が進み、その研究や活用が国際的に飛躍する可能性を秘めている。(c)東方新報/AFPBB News