【6月23日 AFP】東京五輪への不参加を表明すれば、全てのメダルをインドに送ると菅義偉(Yoshihide Suga)首相が提案しているとされた動画が、1万回以上再生されている。だが、この動画の字幕は捏造(ねつぞう)されたものだ。実際には、動画に映っている菅氏は東京五輪には関係のない演説をしており、AFPは同氏がこうした趣旨の発言をした証拠はないと確認している。

 動画は今月7日にフェイスブック(Facebook)に投稿され、22日までの再生回数は1万5000回を超えている。

 動画は、インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相が演説している場面から始まる。中国語の字幕には「われわれインドは、東京五輪への準備が十分にできている。参加のため、いつでも東京に行ける」とある。

 場面は菅氏の演説に切り替わり、次のような中国語の字幕が表示される。「モディ氏がむちゃなことを言っているらしい。だからモディ氏に約束する。インドが来るのをやめれば、五輪のメダルは全てインドのものだ。送料無料だ。優勝国として認めよう」

 この動画は、新型コロナウイルスの感染状況が収束していないにもかかわらず、インド政府が東京五輪に向けて準備を進めると発表した後にネット上で広まった。

 だがグーグル(Google)で画像検索をすると、モディ氏のこの映像は、実際には2018年6月1日に英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」のユーチューブ(YouTube)チャンネルにアップロードされたものだと判明した。自国の外交政策について語っており、中国語の字幕は演説内容とは一致していない。

 一方の菅氏の動画は、例えば2020年10月26日にフジテレビ(Fuji Television)系列のフジニュースネットワーク(Fuji News Network)の配信の中に見つけられる。その見出しは「衆院本会議 菅首相 初の所信表明演説」だ。該当する場面は、菅氏が日中関係について論じている箇所で、こちらも同じく、中国語の字幕は実際の演説内容とは一致していない。

 また、インドが東京五輪への不参加を表明すれば、全てのメダルを送ると菅氏が申し出たことを示す証拠はない。(c)AFP