【6月27日 AFP】仏パリの病院の集中治療室で、きらびやかな衣装を身にまとったバレエダンサー2人がくるくる回るのを、挿管処置を受けている少年が熱心に見つめる。

 2人は、パリ・オペラ座バレエ団(Paris Opera Ballet)のスター、ユーゴ・マルシャン(Hugo Marchand)さんとドロテ・ジルベール(Dorothee Gilbert)さんだ。

「プロムナード、アラベスク、ポルテ・ポワソンをやる」とマルシャンさんは言うと、パートナーのジルベールさんと一緒にベッドや医療機器の周りで複雑な動きを披露した。

「ラ・バヤデール(La Bayadere)」の緑と金の衣装に、マスクを着けた2人は、病室から病室へと移動する。ある部屋では、ピルエットで回ったジルベールさんのドレスがひらひらすると、2人を見つめていた赤ちゃんの目が大きく開いた。

 2人は、スイスとフランスのある協会が主催するプロジェクト「ダンスで何ができるか(What Dance Can Do)」の一環で、ネッケル小児病院(Necker-Enfant Malades Hospital)を訪れた。

 このプロジェクトはダンスを通じて、特に貧困や病気で苦しむ子どもや国を逃れてきた子どもを励ますことを目的としている。

 これまでにモロッコの孤児院やニュージーランドのダンススクール、パリやスイス・チューリヒの病院を訪れており、活動の幅は広がり続けている。

 マルシャンさんは「私たちは、どうすれば子どもたちがつらい日常を忘れられるか分かっている」と語り、「役立っていると感じる」機会を持てるところがいいと続けた。

「子どもたちにちょっとした明るさをもたらせることに、最も心を動かされる。子どもたちがその夜、ダンスの夢をみてくれたらいいなといつも思っている」

「子どもたちの目の輝きに、好奇心や憧れ、あるいはただ『この人たちは一体何をしているのだろう?』と不審に思っている様子が見て取れる」と、ジルベールさんは笑う。

 プロジェクトを運営する協会は、2018年にオーレリア・セリエ(Aurelia Sellier)さんが設立した。約30人のボランティアが活動しており、チュニジアやケニアなどともつながりがある。

 そうした国では、子どもは「社会から排除されていることに深く傷ついているが、ダンスに肯定感を見いだせる」とセリエさんはAFPに語った。

 セリエさんは、「5年後、10年後の目標は、各地域の協会と一緒に国際的な連盟をつくること(中略)つまり、ダンス版の国連(UN)になること!」と続けた。(c)AFP/Rana MOUSSAOUI