【8月2日 AFP】ナイジェリアの貧困地区にある小学校で、レオタードやレギンスに身を包んだ子どもたちが準備運動をしている──ぼろぼろの校舎の使われなくなった教室で行われているのは、地域の子どもたちを対象にしたバレエのレッスンだ。子どもたちは無音の教室でピルエットやアラベスクなどを練習する。無音なのは、音楽をかけるのに必要な電気がここには来ていないためだ。

 大都市ラゴス(Lagos)の貧困地区、アジャンバディ(Ajangbadi)にあるバレエ教室「リープ・オブ・ダンス・アカデミー(Leap of Dance Academy)」は、恵まれない子どもたちがクラシックバレエに触れることを目的に設立された。

 バレエ教室を始めたのは、バレエを愛してやまないというダニエル・アジャラ(Daniel Ajala)さん。オンラインや本を通して独学でバレエを勉強し、2017年に教室を開いた。現在、教室に通う生徒は6~15歳の12人で、運営費用は自らためたお金から捻出しているという。

 レッスンは無料で、子どもたちにはシューズなどのバレエ用品が提供される。子どもたちの大半は、バレエについて何も知らずに参加を決める。アジャラさんはAFPに対し、「バレエはお金がかかるため、お金持ちや上流階級向けだ」「生徒たちにバレエやダンスの高度な教育を受けるための金銭的余裕はない──でも、この美しい芸術を地域に紹介したかった」と述べる。

 アジャラさんによると地元の人々は当初、バレエ教室に懐疑的だったという。

「私たちがここでバレエ教室を始めると周囲からは、『彼らは一体何をしているのだ? 下品なダンスではないのか? キリスト教徒のダンスとは違う!』との声が上がった」

 それでも、数年にわたるトレーニングと努力により、生徒の数は少しずつ増えていった。

 そして、生徒たちにとってバレエは、インスピレーションをもたらし、世界の文化に目を向けるきっかけとなった。生徒の一人、オラミデ・オラウォレ(Olamide Olawole)さん(15)は、自身もダンスの先生になることを考え始めていると話す。

「私がダンスを通じて経験したことを世界中の子どもたちも経験してもらいたい」

「ダンスで気持ちが表現できるようになってほしい」 (c)AFP