【7月2日 AFP】「学校を取り戻す用意はできている?」──活動家のパティ・メンダース(Patti Menders)さんが米東部バージニア州の集会で叫ぶ。米国で広がる反人種差別教育の結果、白人の子どもたちが自らを「迫害者」として見なしている、と訴える人々が結集した。

「イエス!」と数百人の参加者が一斉に答えた。首都ワシントン郊外のリースバーグ(Leesburg)で先月開かれたデモの標的は「批判的人種理論」。米国を分断する文化戦争の一大争点だ。

 この理論は1970年代後期に米国の法学界に登場した考え方で、人種差別を法律や制度によって成り立っているシステムと捉え、個人的偏見のレベルでは論じない。

 教師たちは教室で、奴隷制や人種隔離など米国史の暗部を直視し、人種差別的な既成概念に立ち向かってきた。しかし、保守的な論客は、同理論をやり玉に挙げながら、教師たちを攻撃している。

 2人の子どもを持つ白人女性エリザベス・ペリン(Elizabeth Perrin)さんは、今の子どもたちは「人格の本質ではなく、すべてを肌の色で見ることを学んでいる。自分たちが迫害者で、有色の子どもすべてが被迫害者だと」とAFPに語った。

 学校は「小学2年生に、自分の白さを恥じなさいと教えている」と言う。

■米国を「憎む」ための教育─トランプ前大統領

 ペリンさんの発言は、共和党のドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領に通じるものがある。トランプ氏は昨年、前任者バラク・オバマ(Barack Obama)氏が始めた連邦政府職員を対象とした多様性の研修を打ち切った。

「わが国が恐ろしい場所、人種差別的な場所だと人々に教えていた。わが国を憎むよう教えていた」とトランプ氏は理由を述べた。

 それ以来、テキサスやフロリダなど共和党地盤の少なくとも16州で、「批判的人種理論」を公立学校で教えることを禁ずる法案が既に可決されたか可決の見通しだ。違反すると学校への財政支援が停止される。

 この法制化は「教師にかなりの懸念と不安を引き起こした」とミシガン州立大学(Michigan State University)教師教育学科長のドリンダ・カーター・アンドリュース(Dorinda Carter Andrews)教授は語る。

 教師たちは、面倒に巻き込まれず何を話せるか苦心しているという。しかしこの話題は、昨年の白人警察官による黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんの殺害事件に対する抗議の中、当然避けることのできないものだった。

 人種差別に反対する運動の最近の高まりを見て、学校当局は各種コースを設立し新プログラムの考案を始めたが、親たちの一部は快く思っていないとアンドリュース氏は指摘する。