【6月22日 AFP】シンガポールで22日、ミャンマー出身のメイドに十分な食事を与えず暴行を繰り返し死なせたとして、有罪判決を受けていた雇用主の女に、禁錮30年が言い渡された。判事は本件を「最悪の部類の故殺(計画性のない殺人)」と形容した。

 死亡したのは、ピアン・ヌガイ・ドン(Piang Ngaih Don)さん(当時24)。2016年7月、雇用主のガイヤティリ・ムルガヤン(Gaiyathiri Murugayan)被告(41)から数時間にわたって繰り返し暴行を受けた後、死亡した。

 裁判所の文書によると、被害者は踏みつけられたり、首を絞められたり、ほうきでたたかれたり、熱したアイロンを押し付けられたりしていたという。

 事件の約1年前から被告の家族に雇われていた被害者は、睡眠を一晩5時間に制限され、シャワーや排せつ時にはドアを開けたままにするよう強要されていた。食事もほとんど与えられておらず、1年間で体重が約38%減り、死亡時には24キロしかなかった。

 被告は今年2月、故殺など28の罪状を認めていた。量刑判断ではさらに87の罪状が考慮され、シー・キー・ウーン(See Kee Oon)判事は、禁錮30年の判決を言い渡した。逮捕された2016年からの勾留期間も刑期に算入される。

 判事は「被告の恐ろしい行為の卑劣な残酷さ」に言及し、量刑には今回の犯罪に対する「社会の怒りと嫌悪感」が反映されなけばならないとした一方で、被告の強迫性障害と出産前後に発症したうつなどを考慮すると、終身刑は「公正かつ適切」ではないと考えると説明した。

 検察も被告の精神状態を考慮し、死刑が適用される可能性がある殺人罪よりは刑が軽減される故殺罪で起訴していた。

 シンガポールには約25万人の家庭内労働者がいるが、その大半が比較的貧しいアジア諸国の出身者で、不当な扱いの事例が後を絶たない。(c)AFP