■「現在の視点」から過去を見つめる

 マドリードでのコンサートのわずか1年足らず前、スペイン文化省はセクハラ疑惑調査の余波を受けて、同市のサルスエラ劇場(Teatro de la Zarzuela)で予定されていたドミンゴ氏の連続公演を中止していた。

 米国音楽芸術家組合(AGMA)による調査は、ドミンゴ氏が「不適切な行為」に及んでいたという結論に達した。

 ドミンゴ氏は、1980年代にまでさかのぼる疑惑を一貫して否定。自分は「誰に対しても攻撃的に振る舞ったことはない」と述べ、さらにいかなる訴訟も起こされたことはないと主張した。

 それでも、自分の行いを「不快に思った」同僚がいるかもしれないとして謝罪すると、米ロサンゼルス歌劇場(Los Angeles Opera)の総監督を辞任し、米国での活動を事実上終了した。

 当時を振り返り今、ドミンゴ氏は「非常に困難な数か月だったが、すでに過ぎ去った。とても誠実な形で、報道陣との接触を再開できてうれしく思います」とAFPに語った。「もっと早くこうするべきだった。全てがメディアによる裁判でしたから」

 ドミンゴ氏とAFPのインタビューは対面で行われたが、セクハラ発言に関する質問への回答は、同氏の広報チームの要請でEメールを通じて行われた。

 その中で同氏は、セクハラ発言は「不当で」「根拠がない」とする従来の主張を繰り返していた。

 ただ、こうも付け加えられていた。「今日、われわれは現在の視点で過去を見つめるべきだ。新しい感性や良識を招き入れるために、こうした問題を突き詰めるのは正しいことだ」

「われわれの過去は書き換えられない。状況を踏まえ、過去を理解し、必要なら厳しく批判するべきだ。過去を破壊することには意味がない」