【6月27日 東方新報】東洋と西洋の文明を古くから結び付けてきたシルクロードの歴史的意義を今に伝える「2021年シルクロードウイーク」が18日、中国・浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)で開幕した。同時に、インターネットを通じて各国が所蔵する文化財を公開する「シルクロード・デジタル博物館」が実現した。アジア、ヨーロッパ、イスラム圏が相互交流を深めてきた歴史があらためて浮かび上がった。

 デジタル博物館には、中国の敦煌研究院(Dunhuang Avademy)、大唐西域博物館、中国シルク博物館(China National Silk Museum)をはじめ、日本の平山郁夫シルクロード博物館(Hirayama Ikuo Silk Road Museum)、大英博物館(British Museum)、ロシア国立歴史博物館(State Historical Museum)、米シカゴ美術館(Art Institute of Chicago)、韓国の国立慶州博物館(Gyeongju National Museum)など、18か国の40以上の博物館が参加している。

「デジタル博物館という試みにより、文化遺産を『生き返らせ』、世界中の人々が共有できるように『外に出す』ことができる」。敦煌研究院の趙声良(Zhao Shengliang)院長はその意義を語る。

 展示品は絹製品、宝玉、水晶、陶磁器、革製品など多岐にわたり、中国・戦国時代の青銅製の打楽器や、新羅の黄金の王冠、西夏の竹の彫刻、イスラム圏の絹織物など、時代も地域も非常に幅広い。

 ロシア国立歴史博物館が所蔵するローブは13~14世紀、モンゴル帝国四ハン国の一つ、キプチャク・ハン国の女性貴族の墓から出土したもの。デジタル博物館責任者の王伊嵐(Wang Yilan)氏は「女性は当時の首都サライ(現在の南ロシア付近)に住んでいたが、ローブには中国文化の影響がはっきり見られる。中国で生産された生地を使っていると考えられ、東西の文化と技術の交流を証明しています」と解説する。敦煌の仏教遺跡・莫高窟(ばっこうくつ、Mogao Caves)の壁画「九色鹿」は、古代インドで九色に変化する鹿の物語を描いている。シルクロードが東西の文化を融合させてきたことを、物言わぬ文化財が伝えている。

 杭州市にある中国シルク博物館の趙豊(Zhao Feng)館長は「現代においてシルクロードの交流と相互理解の歴史をいかに広めるか」と長年、考えてきた。数年前からシルクロードのデジタル博物館を設立する構想を抱き、その思いが実現した今、感無量という。

 新型コロナウイルス感染症の拡大により各国の往来がほとんど途絶えている中、人と人との結び付きが豊かな文明・文化をもたらしてきたことを伝えるシルクロード・デジタル博物館。世界がコロナ禍を克服し、一刻も早く人の往来が再開することを願うメッセージが込められている。(c)東方新報/AFPBB News