【9月25日 東方新報】9世紀前半にインドネシア海域で沈没した唐代の貿易船「黒石号」に積まれていた陶磁器、金銀の器などが1200年近い時を経て、中国に「里帰り」した。上海市の上海博物館(Shanghai Museum)で14日から始まった「宝暦風物-黒石号珍品展」に貴重な文化財168点が展示されている。黒石号は中東向けに中国各地の物産を満載しており、当時の「海のシルクロード」の繁栄ぶりを物語っている。

 1990年代末、インドネシアのブリトゥン島海域でナマコをとっていた潜水漁師が多くの陶瓷器を発見した。ドイツのサルベージ会社が1998年から1年近くかけて沈没船を引き揚げた。黒い暗礁に衝突したと推測されたころから、「黒石号」と名付けられた。

 船の材木はアフリカ産で、アラビア商人が中国の産品を中東に運ぼうとしたとみられる。西暦826年にあたる「宝暦二年七月十六日」と記された磁器があり、年代が特定された。船からは陶磁器、金銀器、銅器、鉄器、銭、ガラス、香料など6万点が見つかり、「まるで1200年近く前のタイムカプセル」と大きなニュースとなった。

 発見された文化財の多くはシンガポールのアジア文明博物館に保存されており、中国・シンガポール国交樹立30周年を記念して上海博物館で特別展が開かれている。

 黒石号からは、藍色の顔料で絵付けをした青花磁器が完全な形で見つかっている。気品あふれる白磁に鮮やかな藍色の文様を描く青花磁器は、14世紀に景徳鎮で誕生したといわれてきた。上海博物館陶磁器研究部の彭濤(Peng Tao)副主任は「青花磁器が景徳鎮の時代より500年も前に作られており、しかも海外に輸出されていたとはすごい発見」と驚きを隠さない。

 発見された陶磁器は大半が現在の湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)で作られた彩器や青花器だが、広東省(Guangdong)、河北省(Hebei)、河南省(Henan)が産地の物もある。磁器には漢詩や仏教様式の図案のほか、インド神話をモチーフにした絵やアラビア文字なども書かれている。中国各地の工房が中東の市場を意識し、当初から輸出を目的に大量生産していたとみられ、9世紀においても世界がグローバルにつながっていたことを表している。

 シンガポール・アジア文明博物館(AsianCivilisations Museum)館長の陳威仁(Chen Weiren)館長は「世に知られる陸のシルクロードに比べ、海のシルクロードはまだ解明されていないことが多い。黒石号は現代に多くのことを伝えてくれている」と話している。(c)東方新報/AFPBB News