【6月26日 東方新報】中国で量子力学を応用したというふれこみの「量子商品」が出回っている。専門家は「生活用品で量子を名乗る商品はすべて偽物」と批判しているが、商品は後を絶たない。

 量子スキンケア、量子マスク、量子インソール、量子ペンダント、量子下着、量子メガネ、量子バイオ肥料…。中国のインターネットで「量子」と検索すると、商品が次々と登場してくる。

 商品のPRでは、量子技術が万能のような宣伝文句が並ぶ。「磁場のバランスを整え、体内の循環を改善し、新陳代謝を促進する」「眠っている細胞を刺激し、悪い細胞を代謝させる」「目の下のたるみが消える」「シワをなくす」「免疫力を高め、さまざまな病気を改善・緩和する」「皮下脂肪を減らし、重金属を排除する」…。

 物理学者の唐世彪(Tang Shibiao)氏は「量子技術で実用化されているのは量子通信、量子コンピューター、量子精密測定、量子レーザーなど、大型設備や莫大(ばくだい)なコストを必要とするものばかり。大量生産の民生品に量子技術を使うことはありえない」と断定する。例えば、ネットで多く出回っている「量子美容器」について、中国医学院皮膚科研究所の林彤(Lin Tong)医師は「高周波を使う通常の美容器と同じものにすぎない」と指摘する。

 中国メディアの取材によると、6足セット49元(約835円)で売っている「静電気防止用ソックス」と同製品とみられるソックスが「量子ソックス」として5足セット89元(約1517円)で売られている。製品に凹凸がある「滑り止め付きソックス」と同製品ものが「量子ペースト付きソックス」として倍の値段が売られていた。中には「腰痛が治る」として4万元(約68万1952円)の「量子マットレス」が売られるなど、悪質な高額商品も出回っている。

 中国各地の市場監督部門は、消費者権益保護法や広告法、不正競争防止法などに基づき、業者の取り締まりをしている。広告法では虚偽の宣伝をした場合、業者に広告費用の3~5倍の罰金を科し、広告費用が算出できない場合は20万~100万元(約341万~1705万円)の罰金を科すとしている。しかし、「量子」の名をつけた企業が昨年1年間だけで2000社以上も新たに登記されており、摘発が追いつかない状態だ。

 中国では2019年、民間教育機関などで「5分間で10万文字が読める」という「量子波動速読法」が流行し、「根拠がない」として当局から閉鎖を命じられた騒動があった。それでもまだ「量子商品」に消費者がひきつけられてしまうのは、「あなたの細胞は毎日エネルギーを失っています!」「やっと痛みから解放される時が来た!」「張りのある肌で年齢が止まる!」などと不安をあおり、悩みにつけこむような宣伝文句がインターネット上で野放しにされているためだ。

 中国伝媒大学(Communication University of China)文化産業管理学院法学部の鄭寧(Zheng Ning)学部長は「当局の取り締まりだけでなく、電子商取引プラットフォームが販売商品の監督責任を果たす必要がある」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News