【6月17日 AFP】オーストラリア東部の農家は、数年に及んだ干ばつを耐え抜いたかと思うと、今度は苦労して収穫した作物を食い荒らすネズミの大群と数か月にわたる闘いを強いられている。

 ダボー(Dubbo)近郊で農場を営むコル・ティンク(Col Tink)さん(65)は、何百匹ものネズミを簡易の「ネズミ捕り」へとほうきで追い立てる。ティンクさんのネズミ捕りは大量の水が入ったたらいで、中に落ちたネズミは溺れて死ぬ。

 しかしこのささやかな抵抗では、ティンクさんをはじめ、豪東部の多数の農家を襲ったネズミの大発生にはほとんど歯が立たない。

 ネズミたちは穀物や干し草を食い荒らし、少しでも食べられそうな物を常に狙っている。病院で患者がかじられる、機器が破壊されるといった被害や、ネズミの大群が道を走り回る様子が報告されている。

 オーストラリアでは数年間にわたり干ばつに見舞われ、2019年末からは森林火災が数か月続いた。その後待望の雨が降ったかと思うと、一部地域では洪水が発生。泣き面の農家をさらに襲ったのが、蜂ならぬネズミだった。

 ネズミの大発生は、南半球の冬の間中続く可能性があり、ティンクさんは、またいつ起きてもおかしくない次の干ばつ対策に懸念を抱いている。

「もし今年、本当に寒くて降水量の多い冬にならなければ、春にはどうなるだろうかと少し心配だ」と、ティンクさんは不安を吐露した。

 カーティン大学(Curtin University)のビル・ベイトマン(Bill Bateman)准教授は、ネズミの大発生は10年に1度起きているとみられるが、気候変動でさらに頻発する恐れがあると指摘。

「もし寒い冬がなくなれば、一年中ネズミに餌を与えるようなものであり、これは突発的ではなく慢性的な現象になる」と述べた。(c)AFP/Andrew LEESON