【6月20日 AFP】スイス人登山家の大長老、マルセル・レミ(Marcel Remy)さんは毎週月曜日の朝、ボルダリングに挑む。クライミングウォールを制覇していくその確かな動きから、98歳という年齢を想像するのは難しい。

 レマン湖(Lake Geneva)のほとり、ビルヌーブ(Villeneuve)にある屋内クライミングセンターで息子のクロードさん(68)と落ち合い、高さ16メートルの壁に2回、立ち向かう。

「本当に楽しいものです。体を使い、頭を使い、自分を追い込まないといけないですから」とレミさんはAFPに語った。「一番の理由は健康のためです。筋肉のために続けています」

 生まれてからクライミング一筋。アルプスが遊び場だった。スイスの鉄道会社に勤務し、自由な時間は全て、2人の息子を連れて山で過ごした。

「厳しい父でした。父といると、どんな条件下でも死に物狂いでやりました」とクロードさん。今では弟のイブさん(65)とともに、登山界では知られた存在だ。

 レミさんのこの日、2度目の挑戦。始めの数メートルは難なくこなしたが、上部では数分かけて突破口を探した。やがてホールド上で機敏に跳ねて、左足と右足を入れ替えた。

「ご覧のように、父は最後には問題を解決します」と、下で補助に付いていたクロードさんは言う。「どの世代からも称賛されています…父も若い人の動きをまねようとしています」

 レミさんの最近のクライミングはほとんどが屋内だが、山へ向かうこともある。

 2017年には94歳で、高さ500メートルのスイス有数の石灰岩の壁「ミロワール・ダルジャンティーヌ(Miroir de l'Argentine)」を征服している。「今でも楽しめて、いい気分になれるのに、やめる手はない」とレミさんはいっそう元気だ。(c)AFP/Eloi ROUYER