【6月9日 AFP】中国・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)でイスラム系少数民族ウイグル人の人口削減を目的とする当局の政策により、向こう20年間で約400万人の出生が妨げられる恐れがあることが、研究で明らかになった。

 予測では、少数民族の出生率が低下すると、ウイグル人が多数派を占めている新疆南部で、人口に占める漢民族の割合が、現在の8.4%から25%に上昇する可能性があるという。

 石炭や天然ガスが豊富な新疆には、ここ数十年の間に何百万人もの漢民族が仕事を求めて移住してきたが、これが現地での摩擦の原因となっている。

 ドイツ人研究者のアドリアン・ツェンツ(Adrian Zenz)氏によると、中国の安全保障研究者が公開している論文では、少数民族の居住地区の密集が騒乱の「根本的原因」とされており、リスク軽減策として人口抑制が提言されているという。

 同時に、乾燥地域である新疆には、漢民族の入植者流入を支える天然資源が不足しているとの当局の懸念も記されていることから、中国当局は、出生抑制を地域の人口構成を操作する上での重要な手段と考えているのではないかと、ツェンツ氏は指摘している。

 中国は先週、高齢化社会に対応するために、夫婦一組当たりの子どもの数を3人まで認めるという政策の大幅な変更を発表した。

 しかし、研究者らによると、当局は新疆に関しては、すべての民族が等しく増えることは望んでおらず、少数民族の出生数を減らす政策を積極的に進めているという。

 新疆の産児制限策には、子どもが多すぎると投獄したり、強制的に不妊手術を受けさせたりすることなども含まれている。

 ツェンツ氏は、「新疆南部で人口に占める漢民族の割合を増やすために、少数民族の人口増加を抑制する意図」があると指摘している。

 公式統計によると、新疆の出生率は2017年から2019年にかけてほぼ半減している。オーストラリア戦略政策研究所(Australian Strategic Policy Institute)の分析によると、中国全域で最も減少幅が大きく、世界的にも1950年以降で最大の減少幅となっている。

 ツェンツ氏は、新疆南部の少数民族は2040年までに1314万人になる見通しだが、抑制策によって最大450万人のウイグル人やその他少数民族の出生が妨げられる恐れがあると見積もっている。(c)AFP