【6月2日 AFP】インド各地で1日、数千人の医師が腕に喪章を着け、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はヨガで予防でき、現代医学が多数のコロナ患者を殺していると主張するカリスマヨガ指導者の逮捕を求めてデモを行った。

 伝統医学(アーユルベーダ)とヨガの有名指導者で、伝統医療の一大企業をつくり上げたババ・ラームデーブ(Baba Ramdev)氏は先月、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって、現代医学が「愚かで失敗した科学」であることが示されたと述べ、現代医学の正規療法の薬を飲んだせいで数十万人が死んだと主張した。

 これに対し、インド各地の医師らは1日、「ブラックデー(Black Day)」と称してラームデーブ氏の逮捕を求めるデモを実施。背中に「#ArrestRamdev(ラームデーブを逮捕せよ)」と書かれた個人防護具(PPE)を着た医師や同じ文言が書かれた横断幕の写真を投稿した。

 ニューデリーにある政府系大規模病院の一つ、全インド医学研究所(AIIMS)の医師会は、ラームデーブ氏の発言を「恥ずべきもの」と批判した。

一方、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相を熱烈に支持するラームデーブ氏は、保健相の説得を受けて発言を撤回し、チャットアプリのワッツアップ(WhatsApp)に他人が書いたメッセージを読み上げただけだと主張した。

 しかし、ラームデーブ氏はその後も、自分はヨガとアーユルベーダによって守られているのでワクチンは必要ないと発言し、さらなる反発を招いた。

 ラームデーブ氏はアーユルベーダ企業パタンジャリ(Patanjali)を経営。インド全土に店舗を展開し、練り歯磨きからデニムパンツまであらゆるものを販売しており、時価総額は数億ドルと言われている。

 同社は今年、「コロニル」という名のハーブ飲料を発売した。ラームデーブ氏自ら新型ウイルスに効くと宣伝し、発売記念イベントには保健相も出席した。同社は過去にもがん治療薬があると主張したことがある。

 昨年発表されたインドで信頼度の高い企業ランキングで、パタンジャリは13位に入った。

 ラームデーブ氏は、同性愛やエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)を「治療」できると述べたこともある。(c)AFP