■心の悪魔

 優勝した今年の全豪オープン(Australian Open Tennis Tournament 2021)期間中には、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(Tokyo Organising Committee of the Olympic and Paralympic Games)の森喜朗(Yoshiro Mori)会長(当時)が女性蔑視発言をしたことを非難した。

 昨年はアスリートの長者番付でセレーナを抜き、女子ではトップの3740万ドル(約41億円)を稼いだ大坂だが、スターダムを駆け上がる中で、謙虚で礼儀正しい態度を維持することも心掛けていた。

 2016年の全豪オープンで四大大会(グランドスラム)デビューを果たした後、大坂は大舞台で活躍する選手に成長。数年かけて実力をつけると、2018年の全米オープン決勝ではセレーナをストレートで撃破。勢いに乗った大坂は数か月後の全豪オープンも制し、わずか21歳で世界ランキング1位に上り詰めた。

 しかし、気持ちの面では満たされなかったといい、逆にナンバーワンになったことで「まるで世界対自分というふうに感じてしまい、そのことも大きな重圧になっていたと思う」と大坂は後に明かしている。

 その後は期待を重荷に感じる厳しい時期が続いたが、今年の全豪オープンでは「以前は試合の勝敗だけで自分の存在意義をはかっていた。でも今はもうそうは感じない」と話すなど、よりリラックスした姿勢を身につけた。

 だが、それからわずか3か月で心の悪魔が再び現れた。大坂はこの日ツイッター(Twitter)での投稿で、「大会や他の選手、そして自分の幸福のためにベストなのは、私が棄権して皆さんが再びパリでテニスに集中できるようにすることだと思う。気を散らす存在には決してなりたくなかった」とつづった。(c)AFP