【5月31日 AFP】デンマークなど欧州のメディアは30日、米国が2012~2014年にデンマークの情報機関の支援を受け、ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相ら欧州諸国の首脳や高官に対するスパイ活動をしていたと報じた。

 デンマークの公共放送DRによると、米国家安全保障局(NSA)は、ドイツ、スウェーデン、ノルウェー、フランスの首脳や高官の情報を集めるため、デンマーク国防省傘下の国防情報庁(FE)との協力関係を利用して、デンマークのインターネット回線を盗聴していた。

 2019年6月に就任したデンマークのトリーネ・ブラムセン(Trine Bramsen)国防相がこの「スパイ活動」について報告を受けたのは、2020年8月だったという。

 ブラムセン氏はDRに対し、「緊密な同盟諸国に対する組織的な盗聴は容認できない」と述べた。

 デンマークが米国に監視システムの使用を許可していたのかどうかは明らかになっていない。

 DRは、スウェーデンの公共放送スウェーデン・テレビ(SVT)、ノルウェーの国営テレビ・ラジオNRK、独公共放送の北ドイツ放送(NDR)と西ドイツ放送(WDR)、独日刊紙の南ドイツ新聞(Suddeutsche Zeitung)、仏紙ルモンド(Le Monde)との合同調査を主導し、今回の報道を行った。

 DRによると、NSAのスパイ活動の対象には、ドイツのメルケル首相、当時外相だったフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)氏、野党党首だったペール・シュタインブリュック(Peer Steinbruck)氏らが含まれていた。

 NSAは、ショートメッセージサービス(SMS)や電話、検索・チャット・各種メッセージサービスなどのインターネット通信にアクセスできたという。

 AFPはデンマーク国防情報庁、および当時同庁の長官だったラース・フィンセン(Lars Findsen)氏にコメントを求めたが、回答は得られていない。

 報道が事実であれば、元NSA職員のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)容疑者が2013年に米政府の膨大な秘密情報をメディアに漏えいさせ、米政府が2001年9月11日の米同時多発攻撃後に大規模情報収集活動を行っていたことが明らかになった後も、米国はスパイ活動を行っていたことになる。

 スノーデン容疑者が漏えいさせた情報により、米政府が自国民を監視していたほか、メルケル首相の携帯電話をはじめ、世界中で盗聴をしていたことが明るみに出ていた。(c)AFP