【5月28日 AFP】リビアや係争地ナゴルノカラバフ(Nagorno-Karabakh)などの紛争地で戦うシリア人傭兵(ようへい)の多くが、賃金を搾取されているとする報告書が27日、発表された。彼らを外国の戦場に送り込んでいるのは、10年間に及ぶシリア内戦で暗躍した二大外国勢力であるトルコとロシアのブローカーだ。

 2019年後半以降、傭兵としてトルコとロシアに直接的・間接的に雇用されたシリア人戦闘員は数千人に及ぶ。

「シリア正義と説明責任センター(SJAC)」は「真実と正義のためのシリア人(STJ)」と共同で、搾取されるシリア人傭兵の雇用状況について調査した。

 シリア人傭兵のうち最も大きな割合を占めるのは、トルコの影響下にあるシリア北西部に流れ着いた元反体制派の戦闘員だ。一方、シリア正規軍の元兵士や政権側の元戦闘員の一部は、ロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)など、ロシア軍関係者によって紛争地に派遣されている。

 STJのバッサム・アフマド(Bassam al-Ahmad)専務理事は、「多くのシリア人にとって傭兵稼業が唯一の収入源となっている。国際社会がその根本原因を解決し、関係者に責任を取らせなければならない」と指摘する。

■月給33万円のはずが…

 報告書には、リビアやナゴルノカラバフに送られた戦闘員の多くは選択肢をほとんど与えられず、契約時に提示された賃金のほんの一部しか受け取っていない事実が詳細に記されている。

 シリア反体制派出身の傭兵は、親トルコ派の反体制組織による連合体「シリア国民軍(SNA)」の傘下で緩くつながっているが、「個々の戦闘員は常にSNA幹部に搾取されていた」という。

 リビアで戦ったある傭兵は、「給料が3か月間支払われなかった。前金で1人当たり300ドル(約3万3000円)要求したが、100ドル(約1万1000円)しか渡されなかった。残りは幹部が懐に入れた」と証言した。

 契約時に提示された雇用条件は、月給3000ドル(約33万円)と死亡時の遺族補償金7万5000ドル(約820万円)で、トルコの市民権が約束されることもあった。契約書が作成される場合もあったという。

 報告書は、トルコのために傭兵の募集を行っているブローカーの「武装組織はいつも契約を破る」との証言を紹介し、戦闘員が受け取れる月給は800~1400ドル(約8万8000~15万3000円)と記している。

 SJACのモハンマド・アブダラ(Mohammad al-Abdallah)専務理事は、契約通りの賃金を支払わずに傭兵を外国の戦場での秘密作戦に従事させるのは犯罪の温床になると指摘。リビアではシリア人傭兵による強盗、性的目的の人身売買、誘拐が報告されているとして、「賃金をカットすれば、ただでさえ法規を超越した存在を自認する傭兵たちをさらなる犯罪行為に走らせる」とAFPに語った。(c)AFP