【6月7日 AFP】ギリシャとの国境にまたがるピンドス山脈(Pindus mountains)に源を発し、アルバニアの岩山地帯と平野を抜けて、きらめくアドリア海(Adriatic Sea)に流れ込むビヨサ川(Vjosa River)。その手付かずの景観はアルバニアの宝とされるが、今や脅威が差し迫っている。

 活動家らはビヨサ川を、都市開発やダムなどによって人の手が加えられていない欧州最後の主要な「野生の川」と呼んでいる。川を守るために残された時間は少ないと判断し、自分たちの運動に米俳優レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)さんら著名な環境活動家を引き入れている。

 目下の問題は、トルコとアルバニアの合弁企業が高さ50メートルの水力発電ダムを建設する計画を進めていることだ。アルバニア側のビヨサ川は約200キロにわたるが、この事業によって初めて流れが変えられることになる。ダムができれば、希少な動植物が多い地域が水没し、農地は押し流され、漁師らの生活も破壊されて、数千人が立ち退かなければならなくなる。

「ビヨサ川は、私にとってかけがえのないものです。自分の人生がここにある。子ども時代も青春も」と語る地元の料理店主アーイアン・ゼカイ(Arjan Zeqaj)さん。ツェサラット(Qesarat)村の道路脇にある店からは、起伏する草地が複雑に分岐する川へと続く絶景が見える。

 ダムができれば、全てが消える。店のテラスの近くまで水が打ち寄せるはずだ。

「別の場所に住むしかなくなるだろう」とゼカイさん。「ここで生き残る方法が見つからない」

 ダムをめぐる法廷闘争は20年に及ぶ。ここ数年は、その闘いに活動家も加わっている。

 アルバニアの環境NGO「エコアルバニア(EcoAlbania)」のベスイアナ・グーリ(Besjana Guri)氏は、ビヨサ渓谷を国立公園に指定すべきだとAFPに述べた。「そうすれば、この土地特有の生態系を守れるだけではなく、安定した開発が可能になり、観光と地元のエコツーリズムを促進できる」

 エコアルバニアは、オーストリアを拠点とする「リバーウオッチ(RiverWatch)」などの複数の国際NGOと共に、まれな河川生態系を守る「欧州唯一の機会」として啓蒙(けいもう)運動を進めている。