【6月1日 AFP】アフリカ系米国人のジョージ・フロイド(George Floyd)さんが白人警官に殺害されてから1年。米国の警察のあり方が問われる中、現場からは良い警官が悪い警官と一緒くたにされていると反発する声が聞こえてくる。

「ほとんど毎日、そういう会話を耳にします」と語るホセ・ロドリゲス(Jose Rodriguez)巡査。米マサチューセッツ州ボストン(Boston)の郊外チェルシー(Chelsea)が任地だ。

 警官という仕事を捨てようかと話す人も多いとロドリゲス巡査は言う。「われわれ警官全体の士気が落ち込んでいます」

 昨年5月25日、フロイドさんは米ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で、当時警官だったデレク・ショービン(Derek Chauvin)被告に暴行を受け、46歳で死亡した。

 フロイドさんの首を膝で9分以上にわたって圧迫したショービン被告は殺人などで有罪評決を受け、現在は量刑の言い渡しを待つ身だ。

 全世界に衝撃を与えた事件は、フロイドさんやブリアンナ・テイラー(Breonna Taylor)さんをはじめとするアフリカ系米国人が人種差別や警察の暴力にさらされていることを、もう一度よく考えるきっかけとなった。

 米国でマイノリティーの黒人は、長年にわたり警察の暴力を非難してきた。一方、多くの米国人、とりわけ白人が抱いていた警察の崇高なイメージも危うい。

 離職した警官も少なくない。全米最大の人員を擁するニューヨーク市警では、定年退職者を除く2019年の離職者が1509人だったのに対し、昨年は約2600人に上った。

■「怖くてしゃべれない」

 職務中に人を殺した警官の大多数は、責任を問われることがない。警官を民事訴訟から保護する「資格による免責」が理由の一つだ。公民権運動家、犠牲者の遺族、民主党の議員らはこの改正を求めている。

 チェルシー警察署のジョセフ・ビビア(Joseph Bevere)巡査部長は、フロイドさんの事件後、人事採用で苦労していると言う。「残念です。人助けができる立派な職業なのに」。だが警察には、社会の信頼を取り戻すためにやらねばならないことがあるとも認めた。

 警察による暴力や組織的な差別疑惑の報道に加え、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領による任期中の反移民的な言説が、警察活動に対する信頼を損なったという声もある。

 チェルシー住民の3分の2はヒスパニック系だ。「スペイン語を母語とする住民の中には、われわれのことが怖くてしゃべれないという人がたくさんいる」とロドリゲス氏。特に滞在資格を持たない移民は、国外追放を恐れていると言う。