【5月28日 AFP】チンパンジーはそれぞれの群れ特有の握手に似たしぐさを発展させ、それを学ぶとする観察研究の結果が26日、発表された。12年に及ぶこの研究はチンパンジーの複雑な社会構造に光を当てている。

 ベルギー・アントワープ大学(University of Antwerp)の動物行動学者で、アントワープ王立動物学会(Royal Zoological Society of Antwerp)に所属するエドウィン・ファン・レーウェン(Edwin van Leeuwen)氏は、アフリカ南部ザンビアのチムフンシ野生動物孤児基金(Chimfunshi Wildlife Orphanage Trust)に保護されているチンパンジー数十匹を12年かけて調査した。

 観察対象としたチンパンジーたちは、個体の誕生や死によって大幅に入れ替わったが、ファン・レーウェン氏は異なる二つの群れで、手を使った特定のしぐさが繰り返される様子を観察することができた。

 英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載された調査結果によると、このしぐさは「グルーミング・ハンドクラスプ」と呼ばれる。握手をする個体同士は同時に片腕を頭上に伸ばし、もう片方の手で相手の手首か手を握る。もしくは両手で互いの手を握り合うという。

 ファン・レーウェン氏は長期間の観察を通じて、手を握り合う「握手」は、ある群れ(社会)において他の群れよりも「かなり目立つ」ことを発見した。

 また、雌は雄よりも手を握り合う傾向がはるかに強く、一方、雄は手首を握ることが多かった。これは、雄には自分の優位性を誇示したり、確認したりしたいという欲求があるためと考えられる。

「チンパンジーが群れごとに異なるしぐさを発達させているという事実は、それぞれの群れの中で社会的にそのしぐさを学ぶことを表している」とファン・レーウェン氏はAFPに述べた。

 同氏は、人間の秘密の握手を思わせるこのしぐさを、チンパンジーたちは「ある程度」儀式として学んだように見えると言う。

 また「握手」が観察された二つの群れの構成は基本的にそっくりであるにもかかわらず、それぞれが大きく異なる手の握り方を発達させていたことから、この行動を遺伝や環境といった要因で説明することはできないと言う。

 さらにファン・レーウェン氏は、群れごとに特定のしぐさがあり、そのしぐさが長期にわたって継承されるということは「社会的学習による共通特性」の結果である可能性を指摘した。(c)AFP/Patrick GALEY