【5月30日 東方新報】中国を代表する動画投稿アプリ「抖音(Douyin)」を運営する中国IT大手、字節跳動(ByteDance、バイトダンス)の創業者で、若手カリスマ経営者として知られる張一鳴(Zhang Yiming)氏は年内に、同社の最高経営責任者(CEO)退任することが発表され、大きな波紋を広げている。まだ38歳の張氏はなぜ経営の第一線を離れるのか、米国での訴訟などに伴う圧力や、中国政府によるIT企業への管理強化との関係など、さまざまな臆測を呼んでいる。

 福建省(Fujian)出身の張氏は、天津市(Tianjin)の名門、南開大学(Nankai University)を卒業後、複数のインターネット企業を転々とした後、2011年に大学の同級生、梁汝波(Liang Rubo)氏と一緒に字節跳動を立ち上げた。「地下鉄で新聞を読む人が減り、携帯電話の画面を見る人が増えたことに気付いたことがきっかけだった。これからは携帯電話の時代がやってくると思い、アプリの会社を作ろうと決心した」と、張氏はのちに講演で当時の気持ちをこのように振り返った。

 抖音のアプリの最大の特徴は、簡単に動画を編集できる機能だ。スマホで気軽に撮った映像を加工し、BGMと組み合わせて動画を作成し、家族や友人と共有するほか、アプリ上に公開することもできる。

 たちまち10代、20代の若者の間で人気を博した。中国国内にとどまらず、数年で世界150か国を席巻し、使用者1億5000万人を超えた。しかし一方、個人情報の流出などを懸念する声もあり、昨年8月、当時のドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は、抖音の国際版であるティックトック(TikTok)が米国の国家安全を脅かすと主張し、同社が米国での事業を禁止する大統領令に署名した。翌9月、米商務省は、米国内でのティックトックアプリの新規ダウンロードを禁止すると発表した。

 しかし、この措置に対し、中国商務省は「米国は国家安全を理由に企業の正当の権益を侵害した」と反発し、対抗措置を実施する構えを見せた。米国内の利用者も同調し、同アプリの運用を許可すべきだとして、ペンシルバニア州などの裁判所に提訴した。当時は米中貿易戦争の最中で、中国国内のインターネットには、張氏と抖音を応援するメッセージは多く寄せられた。

 裁判はその後、長期間した。二大国の抗争に巻き込まれたことは、事業拡大に専念したい張氏にとって大きなストレスだったに違いない。また、中国政府は4月、同じく国内のIT大手、阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)に対して、独占禁止法違反などを理由に、約180億元(約3054億円)の罰金を科すことを発表した。次の処罰対象は抖音だとも囁(ささや)かれている。

 張氏がこの時期にCEOの退任する理由は不明だが、「国内外からのさまざまな重圧と関係している」と指摘する中国人記者もいる。張氏の後任は、共同創業者の後任は梁汝波氏と発表され、年末までに引き継ぎが行われる。経営方針などに大きな変化はないという。(c)東方新報/AFPBB News