【12月1日 東方新報】中国を代表する実業家で、慈善家としても知られる浙江省(Zhejiang)出身の銭峰雷(Qian Fenglei)氏は、11月15日に香港市内で正体不明の3人組の男に襲われたことが波紋を広げている。銭氏は「心当たりは全くない」として、犯人逮捕につながる情報提供者に報奨金1000万香港ドル(約1億3419万円)を進呈すると発表したため、中国国内のインターネットは「犯人捜し」で話題沸騰している。

 中国メディアなどによると、銭氏は15日未明、香港中心部の湾仔で、男性秘書と飲食店を出たところ、乗用車から降りてきた3人男に突然襲われた。男らは刃物で銭氏の太ももをさし、男性秘書の頭部を切りつけた。銭氏は運転手が待機していた自身の乗用車に飛び乗り、現場を離れてから警察に通報した。二人とも命の別状はないという。

 銭氏は15日午後、香港メディアの取材に応じ「トラブルに巻き込まれた覚えはない。犯人と面識はない」などと語った。その後、自らの中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo))で、襲ってきた3人とその運転手を含めた犯人4人の逮捕につながる情報の提供者に1000万香港ドルの懸賞金を支払うと書き込んだ。

 1976年生まれの銭氏は、高速道路や不動産投資などで資産を形成し、現在は複数の金融会社などを経営している。同じく浙江省出身のアリババの創業者、馬雲(ジャック・マー、Jack Ma)氏の親友としても知られる。

 銭氏は近年、さまざまな慈善イベントで大金を寄付することで度々メディアに取り上げられている。2012年に人気歌手の王菲(Faye Wong)が主導する障害を持つ子供たちの為の「嫣然天使基金」に2000万元(約3億1576万円)を寄付したほか、2013年の浙江省水害の時に1000万元(約1億5788万円)を寄付した。また2015年、香港のチャリティーオークションで、ジャック・マー氏が描いた油彩画を、4220万香港ドル(約5億6360万円)で落札したことで大きな話題となった。

 銭氏が襲われたことについて、犯人の手口は香港映画のマフィアとほぼ同じことから、インターネットには「銭氏の自己過信の言動が知らないうちにマフィアのボスの逆鱗に触れた」「夜が暗いため人違いだった」といった書き込みが寄せられたほか、銭氏はマカオを拠点に活動した時期があったため「カジノの利権争いと関係している」といった推測もあった。

 さらに、ジャック・マー氏が主導する金融会社、螞蟻科技集団(アント・グループ、Ant Group)は、11月上旬、香港と上海で株式公開の直前になって延期したこととの関連づける人もいる。「上場延期で損失を被ったマフィア関係者がジャック・マー氏への警告として、銭氏を襲ったに違いない」といった書き込みもあった。傷害事件として捜査している香港警察も、情報提供を呼びかけている。(c)東方新報/AFPBB News