【5月29日 東方新報】環境の悪化で急速に減少しているサンゴを再生する取り組みが、中国南部の沿岸部で進んでいる。

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 サンゴの生態系回復を研究する広東海洋大学(Guangdong Ocean University)深セン研究所はこの12年間で、深セン市(Shenzhen)沿岸の海底に6万本のサンゴを移植してきた。研究所のサンゴ礁生態保護・修復工学技術研究センター副主任の廖宝林(Liao Baolin)さんもその1人。「サンゴ礁は『海の熱帯雨林』と言われ、海洋生物の4分の1がサンゴ礁に生息しています。陸上の森が多くの命をはぐくむのと同じように、最も重要な海洋生態系1つなのです」とその重要性を語る。

 廖さんはサンゴの調査目的のため初めて海に潜った時、海底の景色に衝撃を受けた。サンゴが建築用の材料としてもぎ取られたり、ダイナマイトを使って魚を捕る漁業によって破壊されたりして、海底が「砂漠化」していた。

 廖さんらのチームはサンゴの断片を成長させ、種苗を海底に植える作業を繰り返している。深センの海は水中の視認性が低く、指先さえ見えないこともある。海流に押し流されることも多く、作業は困難を極める。それでも廖さんは「私たちの世代でサンゴ礁の復元は難しくとも、未来につながると信じています」と話す。

 広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)潿洲島にあるサンゴ礁保護・復元基地では、ダイビングのライセンスを持つボランティアたちが、サンゴの苗を海底に移植している。この基地は、広西大学(Guangxi University)海洋学部サンゴ礁研究センターが、観光客や島民らにサンゴの保全知識を普及するために設立された。センターの黄雯(Huang Wen)所長は「1990年代は島周辺の海底の70%がサンゴ礁に覆われていたが、地球温暖化や人間活動の影響で、現在は10%未満に減少しました」と話す。

 センターでは、カキの殻を固めてサンゴ礁の種苗板に使い、海底に移植している。黄所長は「潿洲島は観光地で、カキを食べる観光客が多い。捨てられる殻を再利用することは環境保護につながる」と説明する。

 昨年は水温が上昇し、ここ数年植え付けていたサンゴが大量に死滅した。それでも、移植作業を始める前よりサンゴが増えているのは間違いない。「地球温暖化を私たちが止めることはできないが、少しでも多くのサンゴを育てることをあきらめません」と黄所長は話す。

 リゾート地・海南省(Hainan)三亜市(Sanya)の鳳凰島でも、海南南シナ海熱帯海洋研究所がサンゴの移植に取り組んでいる。陳宏(Chen Hong)所長は「サンゴには『個性』があり、それぞれの生活習慣に見合った環境を作り出すことが大切です」と話す。巻き貝のキイロダカラは軟体サンゴの表面に付着する有害な微細藻類を除去し、軟体サンゴはキイロダカラに生活空間を提供している。褐虫藻という植物プランクトンはイシサンゴが呼吸して出す二酸化炭素と海の中の光で光合成を行い、イシサンゴの栄養となる有機物を作っている。

 サンゴの保護・繁殖活動は、海洋生態系全体の保護や水質浄化につながり、人々の生活を守ることにもつながっている。(c)東方新報/AFPBB News