【5月22日 AFP】メキシコ南部の先住民社会には、娘を売って結婚させる慣習がある。エロイナ・フェリシアーノ(Eloina Feliciano)さん(23)は、14歳の時にゲレロ(Guerrero)州の山岳部にある自宅で、自分を売って結婚させないでと母親に懇願したが、聞き入れられなかった。

「私たちは動物じゃない。売られるのは動物だ」。同国で最も貧しい地域の一つ、ゲレロ州メトラトノク(Metlatonoc)に住むフェリシアーノさんは話す。

 先住民「ミシュテカ(Mixtec)」の共同体には、フェリシアーノさんのように慣習に従わされた少女は大勢いる。こうした慣習では、女性は虐待され、夫の家族は貧困から抜け出せないという批判も多い。ゲレロ州では多数の共同体で今もこうした契約が交わされているが、娘を売り渡す慣習は終わらせるべきだという声は強まっている。

 住民らがAFPに語ったところによると、新婦の親が新郎側に要求する金額は、米ドル換算で2000~1万8000ドル(約22万~約200万円)ほどだ。

 山岳部人権トラチノリャン・センター(Tlachinollan Center of Human Rights of the Mountain)の代表を務める人類学者のアベル・バレーラ(Abel Barrera)氏は、売られて結婚した少女たちは虐待を非常に受けやすいとして、「婚家で奴隷扱いされ、家事と農作業を押し付けられている」と指摘する。義理の家族から性的暴行を受けることもあるという。

 助産師のモリリア・フリオ(Maurilia Julio)さん(61)も子どもの時に売られた一人だが、自分の娘たちには決して同じ運命をたどらせなかった。

「お金が欲しいので娘を11万ペソ(約60万円)や12万ペソ(約66万円)で売ることにしたと言う女性は多い。それを聞くと、とても悲しい。自分の子なのに」と話す。

 公式の統計によると、メキシコの総人口1億2600万人のうち先住民は約10%を占め、このうちの70%近くが貧困生活を送っている。ゲレロ州では昨年出産した9~17歳の少女は3000人を上回った。この中には、親に売られて結婚させられた少女もいる。(c)AFP/Jennifer Gonzalez Covarrubias