【5月21日 AFP】ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は21日、アジア系に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)対策法案に署名し、同法が成立した。新型コロナウイルスの流行下で、アジア系に対する攻撃が急増していた。

 バイデン氏は、大勢が集まったホワイトハウスの一室で議会幹部やアジア系の政治家に対し、人種差別は「長年にわたりわが国をむしばんできた醜悪な毒だ」と述べた。

 バイデン氏は、新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に関する反中感情を背景に発生した数々の暴力事件に言及し、アジア系住民が「スケープゴート」にされていると述べた。「この1年、あまりにも多くのアジア系米国人が、外に出て通りを歩くだけで、心の底から身の危険を感じて過ごしてきた」

 アジア・太平洋諸国系の米国人(AAPI)に対する人種差別の撲滅運動「ストップAAPIヘイト(Stop AAPI Hate)」によると、2020年3月からの1年間でアジア系へのヘイトクライムは、警察に通報されたものだけで、言葉によるものを中心に6603件発生した。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は新型ウイルスを「中国ウイルス」や、中国武術のカンフーとインフルエンザを掛け合わせて「カンフル」とたびたび呼び、こうした人種差別的な表現は右派の間で瞬く間に広まった。

 同法は、ヘイトクライムを通報しやすくし、当局の対応を円滑にすることを目的としている。

 バイデン氏は、「心の底から言いたいのは、米国ではヘイトにセーフハーバー(免責)は与えられないということだ」と述べた。「沈黙は共犯だ。私たちは共謀してはならない」 (c)AFP