【5月21日 AFP】インドの新型コロナウイルス感染患者の間で、致死率の高いまれな真菌感染症「ムコール症」が急増していることを受け、国内の各州が20日、緊急措置を命じた。

 新たに2州がムコール症の流行を宣言したほか、数千人の感染が確認された首都ニューデリーなどの主要都市では専門病棟を開設した。

 ムコール症は「黒い菌」とも呼ばれ、感染した人の半数以上が数日以内に死亡。目や上あご部分の摘出手術が必要になる場合もある。

 インド国内の発症者数は通常、年間20人未満にとどまるが、新型コロナウイルスが猛威を振るう中で症例が増加し、新たな脅威となっている。同国では新型ウイルス感染により6週間で12万人が死亡。一方、ムコール症による死者数は発表されていない。

 一部の医師は、新型ウイルス感染症の治療におけるステロイドの乱用がムコール症増加につながっていると指摘する。新型ウイルス感染症の治療に使われる薬の多くは、本来は真菌感染を防ぐ人体の免疫機能を抑制してしまう。

 流行宣言を出したのは西部グジャラート(Gujarat)州と南部テランガナ(Telangana)州の2州。前日には北西部ラジャスタン(Rajasthan)州が宣言している。

 西部マハラシュトラ州(Maharashtra)州は2000人以上の発症を報告。当局によると、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相の地元グジャラート州では約1200人に上る。

 地元の報道によると、ニューデリーの病院では200人以上のムコール症患者を収容。さらに大勢がベッドの空きを待っている状態という。

 IT産業の中心地ベンガルール(旧バンガロール、Bangalore)では19日に専門病棟を開設後、数時間でベッドの空きがなくなったと医師らが語っている。(c)AFP