【5月21日 AFP】米国人は際どいランジェリーを好み、欧州人はよりエレガントなものを選ぶ。中国人はちょっぴり照れ屋だが、開放的になってきている。そう言えば、今まで受けた最大の注文は北朝鮮からだった──。

 こんな下着談義が街角で聞かれるのは、中国の首都北京と上海の中間に位置する江蘇(Jiangsu)省灌雲(Guanyun)県。米や麦の生産地として知られていたのどかな沿岸部が、今や「ランジェリーの都」を名乗っている。

 同県は中国で急増する需要の最大70%を満たし、さらに年間数百万点のランジェリーを輸出。インターネットを駆使し、どんなに奇抜なアイデアでも富に変えてしまう中国の起業家たちの成功例だ。

 このブームの火付け役とされるのは、雷叢瑞(Lei Congrui、レイ・コングルイ)さん(30)。

 15年前、10代だった雷さんは急成長していたeコマース(電子商取引)サイトでさまざまな日用品を売っていた。「お客に、ランジェリーはあるかと何度も聞かれました。聞いたこともない代物でしたが、『あります』と答えてしまい、後から調べました」

 今では100人以上を雇い、「真夜中の魅力(Midnight Charm)」などのネーミングのブランドで年間150万ドル(約1億6300万円)以上の収益を上げている。

 雷さんらの成功により、灌雲県ではランジェリー生産が急拡大。現在では500以上の工場で数万人が働き、生産額は年間3億ドル(約326億円)を超えるという。

■若者の変化

 性に対する中国人の態度は寛容になっている。

 共産主義によって慎み深さが浸透している中国では、ポルノは禁止され、当局は「低俗」とみなすものを定期的に取り締まっている。しかし、開放的な海外の風潮にさらされるようになり、若い世代、特に女性の解放が進んでいる。

 市場調査会社「艾媒(iiMedia)」によると、中国におけるセックス関連商品の2019年のオンライン販売高は前年比50%増加し、70億ドル(約7610億円)に達した。2020年も新型コロナ禍にかかわらず、推定35%増となっている。

 雷さんの初期の客は、海外生活経験のある30歳以上がほとんどだった。しかし、2013年ごろまでに若い中国人も官能性に目覚め始め、売り上げが急増したと言う。現在では客のほとんどが22歳~25歳だ。

 また国内では当初、ゆったりめで控え目なデザインが好まれたが、今では透け感があり体にピッタリのものが主流だ。

 ランジェリー工場で働くリ・ユエ(Li Yue)さん(33)は「若者の態度が追いついてきて、官能的な感覚を日常に持ち込んでいます。ランジェリーの人気は上がっています」と語る。