【5月18日 AFP】彼らはパレスチナ系イスラエル人と自称しているが、イスラエルではアラブ人と呼ばれている。今回のイスラエルとパレスチナの衝突で再び注目を集めているのは、ユダヤ人国家の樹立後もそのまま自らの土地にとどまったパレスチナ人の子孫らだ。

 エルサレム(Jerusalem)での衝突が引き金となり、イスラエル軍による空爆や砲撃と、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)によるロケット弾の応酬が激化している。そうした中、イスラエルで少数派のアラブ系市民が持つ根深い不満が再燃している。

 公式統計によると、イスラエルのアラブ系市民は全人口の20%、約180万人。イスラム教徒とキリスト教徒が占める。

 ユダヤ人国家イスラエルが建国された1948年以降も自らの土地にとどまったパレスチナ人16万人の子孫は、選挙権を持ち、国会の120議席のうち12議席を握っている。だがイスラエル史上、アラブ系政党が連立政権に参加したことはない。

 またユダヤ系市民と違い、アラブ系市民は兵役には就かない。イスラエル国旗の下、3年間の兵役義務が法的に定められているアラブ系は、イスラム教シーア派(Shiite)の少数派ドルーズ(Druze)教徒13万人だけだ。

 国際人権団体「欧州地中海人権ネットワーク(Euro-Mediterranean Human Rights NetworkEMHRN)」によると、貧困線を下回る暮らしをしている世帯はイスラエル全体では5分の1だが、アラブ系世帯では半数を占める。ユダヤ系と比べたアラブ系の失業率は、男性で2倍、女性で3倍だ。

 激しい議論の的となっている問題の一つは、イスラエル当局がアラブ系自治体の土地を没収して、世界各地からのユダヤ人入植者の居住地にしていることだ。

 またアラブ系自治体が受け取る開発のための公的資金は、ユダヤ系自治体よりもはるかに少なく、しかも開発計画もめったに許可されない。

 イスラエル最高裁は2000年7月、少数派のアラブ系市民は差別の犠牲者、とりわけ職業差別の犠牲者だと認める画期的判決を下した。

 今回のイスラエル・パレスチナ間の衝突はイスラエル国内にも波及し、アラブ系市民とユダヤ系市民が入り交じる各都市に飛び火している。

 北部の港湾都市ハイファ(Haifa)に住むアラブ系市民で活動家のマイド・カヤル(Majd Kayyal)さんはツイッター(Twitter)に「われわれは何十年も『パレスチナを!』、『ガザを!』、『アルアクサ(Al-Aqsa、イスラエルが併合した東エルサレムにあるモスク)を!』と叫んで抗議してきた。だが今回、初めて『ハイファを!』と叫んだ」と投稿した。

「ハイファは自らを守るために、そしてロッド(Lod)、ヤッファ(Jaffa)、ガザ、エルサレムを守るために立ち上がっている。これが団結のインティファーダ(反イスラエル闘争)だ」

 アラブ系市民が人口の40%を占める工業都市ロッドでは最近、32歳の父親が銃撃され死亡する事件が起きた。有力な容疑者として、ユダヤ民族主義者数人の名が挙がっている。

 イスラエルは今、二つの紛争に直面している。一つはガザ地区のパレスチナ武装勢力との交戦、もう一つは国内のアラブ系市民とユダヤ系市民の対立だ。(c)AFP