【5月11日 AFP】軍事政権による弾圧を逃れ、隣国タイに退避したミャンマー人ジャーナリスト3人が9日、タイ当局に逮捕された。3人を雇用する放送局「民主ビルマの声(Democratic Voice of BurmaDVB)」が10日夜、発表した。DVBはタイ当局に対し、ミャンマーに送還しないよう求めている。

 DVBのエイ・チャン・ナイン(Aye Chan Naing)編集長は10日の発表で、「彼らは警察の捜索中に逮捕され、タイへの不法入国で起訴された」と述べた。ミャンマーの軍事政権によって3月に放送免許を剥奪されたDVBは、ジャーナリストらに身を隠すよう要請していたという。

 ミャンマーでは、2月1日に軍事クーデターでアウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)国家顧問が追放されて以来、混乱が続いている。

 民主化を求める多くの国民が街頭に出て大規模な抗議デモを行っているのに対し、軍は武力を行使。デモの参加者への発砲、反軍政派とみられる人々に対する夜襲と拘束、ジャーナリストへの攻撃と報道機関の閉鎖などが相次いでいる。

 タイ当局は3人の逮捕を認めている。外務省のターニー・セーンラット(Tanee Sangrat)報道官は解決策を模索しているとし、記者団に「タイの関係当局はこの件について、可能な限り人道的な解決策を見つけるために調整している」と語った。

 ノルウェーのオスロを拠点とするエイ・チャン・ナイン氏は、「DVBはタイ当局に対し、彼らをビルマ(ミャンマーの旧名)に送還しないよう強く求める。帰国した場合、彼らの命は深刻な危険にさらされるだろう」と訴えた。3人と共に、ミャンマー人活動家2人も逮捕されている。

 エイ・チャン・ナイン氏によると、タイ北部チェンマイ(Chiang Mai)で拘束された3人は、11日に裁判所に出廷する予定。

 DVBは民政移管前の軍事政権時代、国外に拠点を置くミャンマーの地下放送として、検閲されていないニュースをテレビやラジオで放送していた。2011年に民政移管すると翌年、ミャンマー国内に拠点を移していた。

 今年のクーデター後の3月に放送免許を剥奪されてからも報道を続け、ミャンマー全土における日々の抗議行動と弾圧について、フェイスブック(Facebook)に掲載していた。

 タイ外国特派員協会(Foreign Correspondents' Club of Thailand)は11日、逮捕されたミャンマー人ジャーナリストらが強制送還された場合、「逮捕され、迫害されるのは間違いない」と警告。「ミャンマーや周辺地域における報道の自由にとって重要なこの事件で、タイ当局が何をするか、世界は見守っている」と強調した。

 現地の監視団体によると、2月1日のクーデター以来、ミャンマー全土で5000人が拘束されており、うち80人以上がジャーナリストだという。(c)AFP